「精が出るものだ」
資料を手繰ったジュリへとかけられた言葉に、彼女は面を上げる。
戦士の威容を漂わせた巨漢が、眼前に佇んでいた。丸テーブルを挟んで彼はじっとこちらを見つめる。まるでその意思を探るかのように。
「……仕事よ」
「それでも、だ。黒将の依頼は人機の操縦技術を叩き込め――それに尽きるはず。だというのにお前が見ているのは……」
「これってそんなに可笑しい?」
テーブル上に広げていたのは世界史の資料本であった。軍部から借り受けた資料は現時点――西暦1988年の最新を行っている。
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