前編
燃え盛るのは絶海の地平。
エメラルドに染まっていたはずの海は、灼熱を湛え水平線を赤く煮え滾らせる。闇夜を淡く、それでいて後戻り出来ない光が景色を満たしていた。
「……壊れてしまった」
何もかも、全て。彼女の信じていたものは、焼け落ち、砕けそして崩壊の一途を辿った。
長い金髪を煤けた風になびかせ、彼女は地面に転がっていた拳銃を手にする。これも暴力の一つ。結実した、破壊の果実。人類が手にした、制圧という名の一個手段。
そのようなもの、この手には一生馴染まないと思っていた。馴染む事などないと、思いたかった。
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