JINKI 10 雨がやんだら

 ――雨がやんだら、謝ろう。

 そう思った時があった。それでも無情にも降りしきる雨は、どこか自分を突き放すようにも見えて。このような瑣末事でいちいち感情を揺り動かされる自分を馬鹿馬鹿しいのだと、叱っているようでもあった。

「……やまねぇな。雨」

 橋の下で両兵はそうこぼす。思い返すのはどうだっていいことばかりなのに、どうでもよくない事実だけが自分の前に屹立している。

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