JINKI 28 私を映画に連れてって

 一度だけ見た光景がある。

 記憶の片隅で埃を被っているその光景は忘れられて久しい。

 特段、珍しいわけではない。だが、何度も思い返すのだ。

 指差し、ぼやけてしまったそれを何度も声に出す。その言葉でさえも掠れていて聞き取ることはできない。

 何度も何度も、反芻する。

 カタカタと、等間隔の音。誰かの寝息。ささやき声と、そしてまた、カタカタという音。

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