JINKI 61 真紅の鎧姫

 標準性能の《バーゴイル》二機相手。試験にはもってこいだ。

「……じゃ、始めましょうかね! テストって奴を!」

 フットペダルを浅く踏み込む。それだけで《クイン・COシャ》の機体が沈み、直後駆け抜けた躯体は《バーゴイル》二機相手に照準の隙すらも与えない。

 右手に携えた短剣と小銃を兼ね備える武装、リバウンドエネルギータレットを掲げ、《クイン・COシャ》はそれぞれの《バーゴイル》の眉間へと狙いをつける。

 撃ったわけでも、ましてや斬ったわけでもない。

 ただ「触れた」のみ。

 しかし通常の人機操縦の域では、敵方の人機に「触れるだけ」などという生易しいことはできない。さらに言えば、それを可能にするほどの性能の機体など極めて限られる。

 その点で言えば、《クイン・COシャ》は合格であった。

「黒カラスちゃん。二羽とも触られただけ、ってのはどんな気分?」

 それはAI自動操縦である《バーゴイル》の神経を逆撫でするはずもないのだが、うち一機はプレッシャーガンを銃剣型に携え斬りかかってきた。

 しかし、接近戦は最も得意とするところ。

 打ち下ろされた一閃を半身になってかわし、その隙だらけの機体へと真正面から浴びせたのは機体後頭部より伸びる電磁鞭であった。

 愛機、《CO・シャパール》から引き継いだお気に入りの武装の一つだ。

 出力の向上した電磁鞭が《バーゴイル》の頭部を引っ叩く。

 触れただけでも機器がショートし機能不全に陥る特別製。それを相手の全機能の集中する頭部コックピットへと注ぐ。

 それだけで決着は見えていた。

 痙攣し仰け反った《バーゴイル》が仰向けに倒れる。その《バーゴイル》の機体を足蹴に、《クイン・COシャ》に搭乗するジュリは鼻歌を口ずさんでいた。

「もう一羽の黒カラスちゃん。来るんなら来なさい。容赦は、しないけれどね」

《バーゴイル》はプレッシャーガンを照射する。片割れが接近戦で敗北したのだ。当然、取るべき手段は中距離からの消耗戦。

 だが、《クイン・COシャ》の性能ならば、その銃撃網を潜り抜けられる。

 ジュリはフッと微笑んで、直後には機体循環パイプを軋ませていた。痩躯を流れるブルブラッドが振動し、女性型のシルエットの機体に負荷がかかる。

「……ファントム」

 紡いだ言葉と共に黄金の燐光を棚引かせて、《クイン・COシャ》は空間を跳躍していた。

 眼前に立ち現れた《クイン・COシャ》相手にたたらを踏んだ《バーゴイル》の頭蓋に、容赦なく刃を突き立てる。

《バーゴイル》から生気が消え失せ、コックピットを貫かれた機体が項垂れた。

『テスト終了。《クイン・COシャ》のロールアウトに問題なし』

「これで……よかったのかしら?」

『……問題ないとも。しかし、《CO・シャパール》は次世代機としてはそれなりに持ってはくれている。何も乗り換えることもないんじゃないか』

 飛んでくるセシルの問いかけをジュリは軽くいなしていた。

「いい女はね、一ところに留まらないのよ。それとも、まだボクには早かったかしら?」

『……上々の返事だ。《クイン・COシャ》は君に預けよう。《CO・シャパール》もまだ現役だし、乗り換えの時期は完全に任せるとするよ』

「可愛げのないコねぇ……」

 通信が切られ、試験場からデータ演算機が収納される。《クイン・COシャ》の全てを記録していたのだ。

 いやらしい、とジュリは舌打ちする。

「どうあっても自分の理想通り、か。癇に障る子じゃないの」

 格納庫へと自動操縦で運び込まれる矢先、不意に声が飛んでくる。

『しかし、どうして貴女だけ……。我々にだって次世代機の権利はあるでしょうに』

「あら? 負けた八将がそれを言う?」

 通信相手は八将陣、ハマド。《K・マ》をアンヘルにやられた直後ではそうも都合よく機体配備もされないというもの。彼は苦々しげに返していた。

『……私は負けたのではない。そうだとも……まだ挽回のチャンスはあるでしょう。なにせ、一人でも残っていればいいのですからね。八将陣とアンヘルとのゲームは始まったばかりです』

「ゲーム、ねぇ……」

 八将陣のリーダー、シバが提案した「ゲーム」。しかしそれは、行方次第で日本と言う国家そのものをロストライフ化する、あり得ないほどに破格の条件だ。

 それをアンヘルも呑んだ。その時点で相手もまともではないのだが、元よりこの空中要塞、シャンデリアの叡智を目にすればそれも当然と言える。

 キョムは何年も前に、どの国にも察知されず、巨大な資源衛星を打ち上げてみせた。もう勝っているも同然の勝負に、半ば土壇場で勝利の駒を進めようとしているのが彼らなのだ。少しくらいは不条理な情勢でも受けなければ敗北であろう。

「……でもま、私も負ける気はないんだけれどね。言ったはずよね? 《CO・シャパール》もまだ負けてないし、この《クイン・COシャ》なんてもっとよ? アンヘルのモリビトなんて目じゃない性能。それに、《CO・シャパール》はモリビト、ナナツー、トウジャ、どれとも違う基礎設計フレームを持つ。この機体のデータだけでも国が動くわ。それを自由にできるのだもの。それなりにリターンはあると思っていいはずでしょう?」

『……その余裕がいつまで続きますかね。言っておきましょう。アンヘルの人機、舐めてかかると痛い目に遭う』

「それは警句? それとも経験則?」

 ハマドは舌打ちを滲ませ、通信に侮蔑の声音を浮かべる。

『……どちらとでも。それにしても、貴女も数奇者だ。何故なのです? バルクスと言い、黒将に選ばれた初期メンバーだからですか? 血続でも、ましてや強化施術も受けずして、純粋なる操主としての腕だけでアンヘルの血続連中に敵うと思っている。それだって、私は言っているのですよ。気を付けなければ刺される、とも』

 確かにキョムのメンバーの中で自分とバルクスは異質であっただろう。

 血続としての素質もなく、ましてや強化人間としての手術も拒んだ。

 ただ純粋に、世界を憎むそれだけの素質を買われて。

「……確かにね。あなたたちから言わせれば、私だって異端でしょう。でも、あなたも、セシルのお坊ちゃんの可愛いゾールもそう。あなたたちみんな――可哀想だもの。見ていて、とてもじゃないけれどね」

『……八将陣のメンバーとは言え、口が過ぎれば……!』

「殺す? それとも、他の方法で? ……どっちにしたって、敗残兵の言えた義理じゃないわね」

 舌鋒鋭く返したこちらに、ハマドは苦渋の末に捨て台詞を吐く。

『……いずれ、後悔する』

「どっちだか」

 通信が切られ、格納庫へと導かれた《クイン・COシャ》がデッキに逆さ吊りになる。《バーゴイル》系列に近いシルエットを持つ《クイン・COシャ》の重量ならば、重力を無視した立たせ方のほうが効率的だ。

 元より、肩を並べさせられるなど、ぞっとする。

《クイン・COシャ》の頸部より這い出たジュリは、さて、と赤い髪を逆立たせていた。

「まずは……ね」

 低く呻いたところで、それは所詮、負け戦。

 赤緒は嘆息をついて並べられた答案用紙を凝視していた。

「……全部赤点……」

「赤緒ーっ。あんたってば酷いわねぇ。いくら休んでいた期間が長いからって、これじゃさすがにどうしようもないわよ」

 栗色の髪に触れられ、赤緒は怠そうに手を払う。

「放っておいてくださいよ……ジュリ先生……」

「ダーメ。せっかくの補習授業なんだから楽しまないと損よ?」

 わしゃわしゃと髪を撫でられ、赤緒は身を引く。

「もうっ! 何なんですか! ……この間は敵だったり、色々したのに……」

「あら? 赤緒ってば思ったよりも女々しいのね? 女は一夜ごとに装いは変えるものでしょう?」

 ジュリの言葉繰りに赤緒は参ってしまう。

「……先生は、結局どっちなんですか」

 敵なのか、味方なのか。それを問い質す前に、ジュリの指先が唇に伸びる。

「それは、言わないのがお約束じゃない?」

 さっと身を退けさせたが、それさえも愉快なようでジュリは妖しく微笑んでいた。自分は、と言うと翻弄されっ放しである。

「……先生は、こうやって先生やっている時と、八将陣のメンバーとして私たちの前に立つ時と、どっちが……本当なのか分かりません……。私に何をさせたいんですか」

「んーまぁ今のままじゃ、倒し甲斐もないし、とりあえず強くはさせたいかなー。勉学の面でも人機操縦の面でもねぇ」

「私たちは……ただの障壁だと思っているんじゃ……」

「そんなことはないわよー? あのハマドやカリスの坊やを屈服させたんだもの。それなりには見ているわ」

「それは、その……シバさんの言うように、モリビトの強さの木漏れ日が見える……とかですか……?」

「まぁ、そういう言い方もあるわねぇ」

 何だかいつもよりも、ジュリはこの時、言葉繰りを迷っているように思えていた。だからなのだろうか。

 赤緒は、ついつい切り込んでいた。

「……もし……ジュリ先生は私たち、アンヘルを倒したら……どうするんですか?」

 そんなこと、問い質してもどうしようもないことだろう。

 日本はロストライフ化し、人類には絶望が訪れる。

 自分の近しい人間にも危害を加えられるかもしれない。そう思うとこんなところで補習授業を受けている場合でもなかったが、ジュリは思案する。

「そうね……。たまには故郷に帰るかな……」

「故郷……。ジュリ先生は、その、日本が……」

「あー、故郷はね、ここじゃないのよね。八城ジュリ、なんて日本人みたいな名前をもらっているけれど、本当の名前はジュリだけ。これは秘密だからねー、赤緒ー」

 唇の前で指を立てて妖艶に笑ってみせるジュリに赤緒には、その真実の意味を問い返すのは憚られていた。

 八将陣は、何のために――世界をどうしたくってロストライフ化を進めていると言うのか。その真意をまだ、問いかけてはいなかったのだ。

 シバに尋ねれば、また煙に巻かれてしまうだろう。だが今のジュリならば、何か応じてくれるような気がしていた。

「……先生は、何で八将陣に……。だって、他の生き方だっていくらでも――」

「ないわ。他の生き方なんてね」

 それだけは、これまでに聞いたどの論調よりも冷たく断じるものであった。

 本当に戦う以外の生き方を規定していない人間の声音に、赤緒はまごついてしまう。

 そんな空気を悟ってか、ジュリは楽観的な声を咲かせるのだった。

「まーあんたみたいなお馬鹿さんを少しは更生させられる道ではあるかもねー。こうやって世界征服しつつ、先生やるってのも。案外、大変なのよ? 世界の裏側で飛び回りつつ、明日のテストの問題作るのってねー」

 どこか浮かれ調子でもあったが、実際にはそうでもないのだ。

 ――ジュリはきっと、この授業が終わればまた、八将陣として誰かの幸せを摘みに行く。

 そのアンバランスさが、自分にはどうしても信じられない。

 こうして自分に道徳や世界の広さを説く一方で、彼女は同じ声で、同じ手で誰かを殺し、そして支配を強める。

 そこに道徳心の欠片もない、獣の論理で。

 だがそんなもの、分かっていても信じたくはないではないか。

 赤緒は抵抗のように、強く声にしていた。

「じゃ、じゃあ私は! 先生が先生でいられる時間が長くできるようにその……出来の悪い生徒でいますっ! ……って、これじゃまるで不良宣言みたい……」

 しゅんとした赤緒に比してジュリは快活に笑っていた。

「いいわね! こーんな間抜けな赤緒が不良になるってのも! ……でもま、先生でいられる時間、か。長いようで短いのかもね、それってさ」

 どういう、と問い質す前にジュリはこちらにデコピンする。

「はい、とりあえずあとは宿題ね。先生、これでも忙しいから。じゃあまた」

 じくりと痛む額を押さえながら、赤緒はジュリの背中を見送る。

 その背中がどうしてなのだろう。

 とても寂しいものに、思えてしまったのは。

 故郷に帰っていた。

 正確には「故郷であった」場所へと。

《CO・シャパール》が着地したのは、何もない荒野だ。空を仰げば漆黒の雷鳴が轟き、世界を暗礁に染め上げている。

 ここが死地。ここが全ての終着点とでも言うように。

「……赤緒には見せたくないわね。ロストライフ化の終わりってのは」

 ロストライフ化すれば、その土地は闇に支配され、人々は恐慌に駆られる。

 その数分前まで穏やかな笑みを浮かべていた者たちが、途端に人間の心をなくしこの世で最も残虐な生命体と化す。

 それほどまでに溝が深いのだ。

 黒将――世界を呪った男の怨嗟はまだ。

「赦しを乞う人間だっていたでしょうに。あなたは絶対に赦さないのよね、黒将。でも、あなたは恨みの権化だった。私と最初に出会った時もそう」

《CO・シャパール》の操縦桿を握っていた腕が、途端にぶれ、拳銃を握り締めている残像が浮かび上がる。

 血で染め上った大地と世界。

 殺し合いと恨みの連鎖が延々と続く暗黒領域。

 その最果てで、漆黒の男はまるでワルツのように耳心地の良い声音で問いかける。

 ――お前の子供は死なずに済んだ。この世界でなければ、な。

 愛した子供。慈しみ、そして全てを捧げた我が子。しかし、彼が求めたのは慈愛の教育ではなく、呪いの英才であった。

 人殺しの術と、敵へと最も効果的な呪詛のぶつけ方のみを教わったその子供は、最後の最後まで、正しいと信じた神のために身を投じた。

 それは違うと、言えないただの女の身である自分を残して。

 蔑まれ、疎まれ、そして排斥された先にあったのは、途方もない虚無であった。

 ――異端者の女。教えから身を背いた背徳の者には死を。

 しかしその言葉を遮り、そして世界を覆したのはたった一つの「力」の巨神。

《モリビト一号》がこれまでの「ジュリ」の世界であった全てを破壊し、そして作り変えていた。

 ――バルクス・ウォーゲイルは勇猛たる英姿だ。

 そう祭り上げられ、そして死地へと赴いていた愛する人が全てに絶望し、八将陣の末席に加えられたのを聞いた自分は決意する。

 この間違った世界への反逆を。

 弱者を弱者として搾取し、強者のみが抗弁を許されるのならば、自分は強者の側に立って支配する。

 負ければ何もかも「なかったこと」になる。

 だが勝てば全てが戻ってくる。

 ――否、戻ってくると、信じたいだけか。

「……なんてことはないわね。私だって、存分に間違えた。でもね、赤緒。もう報いる術はないのよ。死んじゃったあの子になんてね」

 この暗礁の大地を踏み締めるのは現地のレジスタンスであろう。

 型落ちの《ナナツーウェイ》が高機動の改造を施され、砂礫の大地を踏みしだいていく。

 三機編隊が恐慌に震え、その手に携えた連装ガトリングが火を噴いていた。

 その射線から《CO・シャパール》は跳ね上がり、空中を直角に折れ曲がる。

 ――空中ファントム。

 会得するのには相当な熟練度が必要になるこの力を、自分とバルクスは強化人間施術や洗脳に頼らずに完全に物にしていた。

 それはひとえにこの世界を恨む、憎悪が原動力であった。

 着地と同時に鋭角的な膝蹴りが《ナナツーウェイ》のコックピットを打ち砕く。これで一死、と数えたジュリは即座に反転し、電磁鞭を空間に奔らせていた。

 血塊炉へと命中し、電撃が跳ね回る。

《ナナツーウェイ》から黒煙が上がり、噴き出したブルブラッドが蒸発して強いオゾン臭を放っていた。

 二死、と感覚する前に《CO・シャパール》は浮かび上がっている。

 叩き込まれたブレードの一閃に軽業師の動きで翻弄した愛機は、浴びせ蹴りで武装を叩き落そうとして、敵人機に掴み上げられる。

 ナナツーのパワーに一度でも捕まれば、それは既に死の射程だ。

 最小限にしか推進剤のついていない《CO・シャパール》は格好の相手だろう。

 振り回され脳髄をシェイクされる。思考がスパークする中で、ジュリは過去の幻影に囚われていた。

 ――這い寄るのは殺してきた影と、殺されてきた者たち。

 いつだって、彼らは囁きかける。

 どうしてお前はこちら側ではないのか、と。

「……残念ね。私は、どうせ壊れちゃう世界なら壊す側でいいと、思ったからよ!」

 蹴り上げた《CO・シャパール》はナナツーの剛腕より逃れ、即座に飛び退る。

 装甲も薄い《CO・シャパール》では《ナナツーウェイ》のパワーをいなして攻勢に転じるなんてことはできない。

 だから――既に手は打っておく。

 地面を蛇の如く這い進み、鎌首をもたげた電磁鞭がナナツーの足首にかかっていた。

「悪いわね……搦め手ばっかりが得意で……ッ!」

《ナナツーウェイ》が姿勢を崩した一瞬の隙。

 その期を逃さず、《CO・シャパール》は右手に装備された短剣を保持し、旋風の勢いで払っていた。

《ナナツーウェイ》の首から上が寸断される。

 首を落とされた相手は、よろよろと後ずさったかと思うと、力なく倒れ込んでいた。

 息を切らせ、ジュリは感じ取る。

 ――まだ、生きている。まだ、生き延びている。

 爆発しそうな鼓動を確かめ、そして脈打つ己の心臓をしっかりと噛み締める。

 口の中に広がった血の味だけが、自分の確かなもの。鼻腔の奥が切れたのか、鼻血が伝っていた。

 それでも生きているのならば。生き永らえたのなら、責任があるはずだ。

 明日を壊すか、明日を生かすかの責任が。

《CO・シャパール》は右手を天に突きつける。

 まるで宣戦布告のように、暗夜へと紅蓮の剣を番えていた。

 これが自分の生きている証明。これが「自分」。これが「ジュリ」――。

 瞬間、豪雨に包まれる。世界を恨んだ男の止まない雨が。灰色の世界が降り立つ。

「……黒将。あなたも可哀想だった。……でも同情はしないわ。それだけは、絶対にしない。だって、私はただのジュリ。生きるのに精一杯なのだもの。だから、生きているものには薄情でも、絶対に憐みだけは向けるものですか」

 そんな覚悟にどうしてだろう。

 少しだけ翳が差したのは、日本での教師としての日々が過ったからだろうか。

 赤緒たちと共に過ごす平穏な日々が、あの暗澹たる過去を消し潰すほどの、明るく眩しい日常が、ジュリの覚悟を問い質す。

 だが迷うことはない。

 もう決めた道だ。

「……美しい獣はね、最後の最後は孤独に死ぬのよ」

 その女豹のようなシルエットを刻み込み――。

 真紅の残像は、ロストライフに染まった地より、掻き消えていた。

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