JINKI 63 私のマンガ道

 等間隔にペンを走らせる音が響く中で、赤緒は息を詰めていた。

 眼前にあるのは真っ白な漫画用紙。そこへと指定された背景を描き加えようとして、あっとその指がインクをこぼしてしまう。

「ご、ゴメンね、マキちゃん……。すぐに拭くから……」

 自分の失敗にも、マキは一顧だにしない。それほどに集中しているのだ。改めて、赤緒はマキより与えられた作業部屋を見渡す。

 木目作りの小部屋で、扇風機が部屋の隅で回っていた。

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