ウィンブルガ 1 真白&飛花 悲惨なる末路

 ~数時間前~

 真白とともにドミネイター本国へと連行された飛花は、真白とは隔離され、別の場所でその身を拘束されていた。

(これは天津之黄泉にもあった……)

 彼女の手足を飲み込む装置は、天津之黄泉での断罪の儀の際、彼女と戦巫女達が捕らえられていたものと酷似していた。

「天津之黄泉の技術を転用して我々が開発したものだ。もちろん〝あれ〟も使えるぞ」

 ステージに立ち、飛花を見上げながら不敵に嗤う少女――スノゥが飛花に説明する。

「うっ、くっ……姉さんはどこなのっ!?」

 飛花がキッとスノゥを睨む。四肢を捻るように動かしてみるも、やはりびくともしなかった。しかし、彼女もまた真白と同じく絶望的な状況にもかかわらず、その心は一切折れている様子は無かった。

「姉さん? あぁ、真白・ミューラーか。あの女は別の場所で公開陵辱を受けているよ。今頃、根室のやつに犯されてるんじゃないの」

 スノゥが同じ女性とは思えないほど冷たく言い放つ。

 どこかにマイクが設置されているのか、2人の声がステージに置かれたスピーカーから聞こえている。

「なっ……!? 今すぐ止めさせて! 代わりに私を好きにすれば良い!」

 〝姉さんだけは綺麗なままで〟――そのためなら飛花は己の身を差し出すことも厭わなかった。

「ははははは! いじらしい友情だね。眩しいくらいだ……だが、2人ともきっちり敵性分子として刑を受けてもらう。それにメインはあっちでお前はおまけみたいなものなんだよ。それでも敢えてこっちに来た物好きもいるんだ。お前はその身体で彼らをしっかり満足させてやれよ」

「な、何をふざけたことをっ……!!」

 あまりの言い草に飛花が激昂する。その怒りの声を背後に聞きながら、スノゥはステージに詰めかけた見物客の方を向いた。

「物好きな男達!! せっかくこっちに来たのだ、滅多に見れないものを見せてやるっ!!」

 スノゥの宣言に会場は大いに盛り上がっている。

 飛花は心に渦巻く不安な気持ちを悟られないように硬い表情で前を向いていた。絶対に無様な姿は晒さないと心に決めていた。

「アヴァン・ルージュはなかなかイカれた連中でな、女達は腹の中に爆弾を入れているんだ」

 スノゥが自分の下腹部――子宮のあたりを指差しながら、見物客に説明する。アヴァン・ルージュの〝聖弾〟……捕らえた女兵士を嬲りものにしようとした男を道連れにするために仕込まれた胎内の爆弾は、当然、飛花の中にも入っている。

「今日はその危ないものを本人自ら取り出してもらうとしよう」

 そう言って、小さな注射器を取り出した。

「な、何よ……それ……」

 注射器の中に入っている薄紫色の液体に飛花の目が釘付けになる。これからこの液体が自分に投与されることは間違いない。それによって自分はどうなってしまうのか……飛花の瞳が不安で揺れる。

 スノゥはその僅かな揺らぎを見逃さなかった。

「ひひひ……これはな、捕らえた女を拷問するために新たに開発された〝陣痛発生剤〟だ!」

 ――それは余りにも物騒で場違いな言葉だった。

「じ、じん、つう……?」

 飛花とて年頃の女性であり、その言葉の意味することは当然知識として持っている。しかし、今この場でその単語を耳にすると、あまりにも空恐ろしく感じた。

「女の身体が経験する痛みの中で1番大きいものは何か知っているか? 殴られた時? それとも骨を折られた時? 違う……それはな、陣痛だ」

 出産時に子宮が収縮することで発生する陣痛――その激痛を強制的に引き起こすことができるのであれば、それは女性にとって、まさに拷問以外の何物でもない。

「はははは! 良い表情になってきたなっ! 怖いか、怖いよなぁ」

スノゥは飛花の屈辱と恐怖が入り混じり引き攣った表情を見て満足そうに頷くと、詰めかけた見物客の前で声高らかに宣言した。

「聞けーーっ!! これより、飛花・ルージュの公開陵辱を開始するっ!!!!」

 詰めかけた男性達から興奮に染まった野太い歓声が上がる。顔に一文字の傷痕があるとは言え、飛花は真白に負けず劣らずの美少女である。そんな彼女が陣痛で苦しむ姿を想像し、皆股間を固くしている。〝女性への愛を知らない〟ドミネイターらしい歪んだ感情だった。

「くっ、そぉっ……!!」

 劇薬の入った注射器を持ったスノゥが飛花の方へとゆっくりと近付いてくる。経験上、〝これ〟に捕らえられたが最後、絶対に自分からは抜け出せないことを飛花は知っていた。しかも、ご丁寧に捕らえた者の体力を奪う機能までも再現されていた。仮に抜け出せたとしても、到底この場から逃げ果せることは叶わない。

 それでも飛花は身体を捩って暴れさせる。そうでもしないと恐怖が気丈を喰い尽してしまいそうだった。

「はははっ! 逃げられる訳ないだろう! お前はこれからしっかり泣き叫びながら腹の中のものを出すんだよ!」

 そう言ってスノゥが飛花の下腹部にピタリと針の先端を当てた。

「あぁ、何か言うことはあるか? 一応聞いておいてやる」

「何もないわよ! こんなもの……私は絶対に負けないからっ!!」

 スノゥだけでなく、この会場にいる全員に向かって力強く言い放った飛花の柔肌に注射針が突き立てられた。

「痛っ……」

 チクッとした痛みと同時にシリンジがゆっくりと押し込まれる。飛花は得体の知れない液体が自らの身体に注入されていくのを歯を食い縛って睨んでいた。

 僅か数秒で注入は終了し、針が抜かれる。

「はぁっ、はぁっ……な、何も……起きないようだけど?」

 液体を注入されてから数十秒が経過した。

 注射針に刺された部分に僅かな違和感を覚えるものの、それ以外に変化は感じられない。

「ど、どうやら、その薬品は失敗作みたいね。残念だった……」

 ――その瞬間だった。

  ズキンッ――!

「い゛っ!?」

 突然、飛花は下腹部に激しい痛みを覚えた。

  ズキンッ、ズキンッ――!!

「い゛っ! ぎっ!?」

 その痛みは次第に激しさを増していく。

 普段の腹痛よりも少し下……ちょうど子宮のあたりからその痛みは生まれていた。まるで〝それ〟を捻じり上げられるような激痛だった。

「いっ、たいぃぃっ!! 痛いっ、痛いっ! 何、これっ……痛いぃぃっ!!!」

「ははははっ! 始まったな、しっかりとその痛みを味わいと良い」

 飛花の顔は苦痛に歪み、額には早くもじっとりと脂汗が滲んでいた。唯一自由になる腰を跳ねる様に動かしてみるも、その激痛が引くことは無い。

 ――初めて味わう陣痛の痛み。それは飛花がこれまでに経験した痛みの中で最も恐怖を感じるものだった。

「ぐっ――、あ゛っ、あ゛ぁあ゛ぁ゛あぁ゛ぁあ゛あ……っ!!!」

 恐怖に見開いた目で自分の下腹部を見てみるが、表面上は何も変化はない。しかし、その内面では、子宮が激しく収縮し、持ち主に凄まじい苦痛を与えている。

「いだっ、いだいっ、いだいぃ゛いい゛ぃ゛ぃい゛いっ!!! あっぐ、あ゛っ、あぁあああぁ……!! 痛いぃいいいぃっ!!!」

 飛花の目尻からボロボロと涙が出始めた。自分の顔を気にする余裕など一切無く、涎が垂れるのも構わず、大口を開けて泣き喚く。あまりの痛みで、『もうやめて』、『もう許して』と口から出そうになるのを何とか押し留める。それだけは絶対に口にしてはいけない〝敗北の言葉〟だった。

「あぎぃっ、い゛だっ、痛ぁ゛っ!! ふぅ――っ、ふぅ――っ! う゛あぁ゛ぁあ゛あ゛ぁあっっ!!!」

 初めて味わう感覚がもたらす苦痛と恐怖から逃れようと、飛花は叫びながらブンブンと首を振る。そうしている間にも激痛がどんどん膨らみ、飛花の下半身を支配していく。

「ぐぎっ!! んぎっ……い゛、ぎっ……いぃ゛いい゛ぃ゛いっ――――っ!!」

 こめかみや腹部の血管ははっきりと浮き出ており、飛花の身体に相当な力が入っていることが窺える。そうでなければ、すぐに気を失ってしまいそうだった。生理痛とは比べ物にならない子宮の収縮痛――それは完全に飛花の想像の遥か上であり、本当に子宮を鷲掴みにされているのではないかと錯覚するほどだ。

(し、子宮が痙攣して……痛い痛い痛い痛い――っ!!!!)

 一方、見物客は飛花が悲痛な叫び声を上げるたびに、歓声を上げている。目の前で美少女が激痛に悶え苦しんでいる姿を見て、自慰に耽る者さえいた。グロリアの公開懲罰の時よりも更に見物客の興奮度合いは高そうだった。

「これはすごい効き目だな……」

 飛花の絶叫を間近で聞きながらスノゥがボソッと呟いた。

 出産の際、赤子が産道を通る感触が喜びとなって特殊なホルモンを分泌し、陣痛の痛みをコントロールできるようになると言われている。しかし、この拷問にはその慈悲は無い。人工的に引き起こされた子宮収縮による激痛に苛まれるだけである。

 アヴァン・ルージュのエースとして、活躍していた飛花――痛みには強いであろう彼女ですら、ここまで悶え苦しんでいるのだ。並の女性ではたちどころに素直になるだろう。今後、この薬品が女性への効果的な拷問方法として確立されることは間違いなかった。

「ほらほら、しっかりイキんでさっさと出せよ! どうせ、膣の奥に入れてるだけなんだろ!? それとも、負けを認めて〝皆様の性奴隷になります〟って宣言するか?」

 全身を汗まみれにしながら苦しむ飛花を囃し立てるスノゥ。飛花は眼前の拷問官の顔を涙ながらに睨み付けた。

「そ、そんなこと……っ……言うはず、無いでしょっ! うぅううぅぅっ……!! がっ、いぎぃい゛いぃ゛っ!!!」

 抵抗の言葉はすぐに悲鳴に掻き消されてしまったが、飛花の心はまだ手折られてはいなかった。

「へぇ、やっぱり我慢強いな。そんなお前が完全に折れる瞬間が楽しみだ」

 スノゥは、壊れにくい玩具が手に入ったと邪悪にほくそ笑む。

「ぐぅううぅっ!! は、はひ、ひぃっ、ぐっ……あぁああぁあっ!!! あぁああぁああぁぁ――っ!!!!!」

 四肢を完全に拘束された彼女が痛みを紛らわせる唯一の方法が絶叫することだった。叫んだところで痛みが治まることは無いと重々分かっていても、叫ばずにはいられなかった。

 何度も何度も波のように収縮を続ける子宮。まるで別の生き物になってしまったかのように蠢いている。そして、その収縮は子宮だけに止まらなかった。

(……っ!? こ、この感触……まさか……!!)

 飛花の身体はこの地獄の苦しみから逃れようと、無意識にいきんでしまっていた。それに伴って膣壁も蠢動し、飛花の胎内の〝聖弾〟を外に押し出そうとしていた。

 爆弾の硬質な角が膣壁を擦りながら降りてくる。

「ぐっ……がっ、ぎっ……うぅぅううっ!! ぐぅうう゛うぅ゛ぅ゛う゛ぅぅうっ!!!!」

 ミシミシと音を立てそうなほど強く歯を噛み締める。

(痛い……痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い……!!!!!!)

 陣痛に加えて、デリケートな膣の柔肉が引っ掻かれる痛みによって視界がチカチカと明滅を繰り返す。

 飛花の悲鳴に呼ばれるように爆弾がじわじわと〝出口〟へと向かってくる。そして、処女膜の間をニュルンっと通過した瞬間、一際大きな絶叫が広場中に轟いた。

「うぁあ゛あ゛あああ゛あぁぁ゛ぁああ゛あぁぁ――っ!!!!」

 カツン――っという音が聞こえたのはスノゥだけだった。飛花は憎きドミネイターが囃し立てる中で爆弾を産み落とした。

 コロコロと足元に転がって来た小型の爆弾を拾い上げる。それは、陣痛によって分泌されたと思しき、子宮液と膣粘液でべったりと汚れていた。

「ははははははっ!! こいつ、爆弾を産みやがったぞっ!!」

 スノゥが爆弾を見物客の方へと掲げると、ステージの後方に設置されているスクリーンに、スノゥの持つ爆弾がでかでかと映って、男達から大歓声が上がった。

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……っ!!?? あがぁっ!? いたぁっ!!!」

 息つく間もなく、再び子宮がズキンズキンと激しく痛み始めた。

「な、なんでっ!? もう出した、のに……」

「お前、バカか? この陣痛は薬品によって引き起こされているんだ。効き目が無くなるまで続くに決まっているだろう?」

「なっ!? そ、そんなっ……ぎっ!! 痛い、痛い痛い痛いぃぃぃいいいっ!!!」

 胎内の爆弾を産み落としたにも関わらず、治まることの無い陣痛。女性にとって最も大切な我が子を育む部屋を、いつ終わるとも分からない拷問に晒されて平気な者など存在しない。それは飛花も同じだった――

 絶え間なく襲ってくる子宮への激痛に何度も敗北を認めそうになる度に、真白の顔が脳裏に浮かぶ。

(姉さん……私、絶対に負けないからっ……!!)

 そう自分に言い聞かせた飛花は、そこからさらに数十分に渡って、子宮が収縮する激痛に絶叫し続けた…………

 薬の効果が切れ、痛みが治まる頃には、飛花は息も絶え絶えになっていた。顔を汗と涙で濡らし、谷間は零れた唾液でベタベタになっている。目は大きく見開き、喘息のようなかすれた呼吸を繰り返していた。

 この陣痛発生剤を実験として使用されたドミネイトの女兵士5人は5人とも失神した。内2人は失神する直前に『殺して下さい』と懇願したほどだった。そんな中で飛花が失神しなかったのは、彼女の気力がそれだけ高いと言うことだ。

「はぁ、はぁっ……も、もう終わり?……残念だったわね……まだ降参じゃなくて……」

 収縮が終わった後も続くジクジクとした子宮の痛みに顔をしかめながら、飛花はスノゥを挑発した。飛花とて、これで終わるはずが無いことは分かっている――これは精一杯の強がりだった。

「ははっ、まさか。次は〝あれ〟をやってやるよ。その装置に捕らえられているんだから分かるだろ? そうだ、良いことを教えておいてやる。お前の陣痛が治まった頃あたりから、実はこっちの様子を向こう――真白・ミューラーが見ているんだよ」

「なっ――!? なんですって!?」

 突然聞かされた信じられない事実に飛花は驚き、狼狽える。

(姉さんが私のことを見ている……!?)

「これからお前に行うことを真白に見せたいんだとさ。ほんと根室は歪んでるよね」

「そんなことして、何の意味があるのよっ!?」

「さぁ? 真白・ミューラーが思ったよりも反抗的だから、大人しくさせたいのか……相棒が壊される様子を見させて絶望させたいのか……」

 どちらにせよ最悪だった。自分のせいで真白が苦しむ――飛花にとって、最も避けたいことが現実に起ころうとしていた。頭をフル回転させて、自分にでき得る精一杯のことを考える。

「さて、お仲間も見ていることだし、さっさと始めようか……鐘突きをさ!!」

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