声は届かないと分かっていても、真白は半狂乱になって飛花の名を叫び続ける。
大切な仲間が目の前で拷問じみた責めを受け、あまりにもあっけなく無惨に処女を失ったのだ。冷静でいられるわけがない。
『はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ…………』
スクリーンに映る飛花は目を見開き、涙を流しながら天を仰ぐように虚空を見つめていた。荒い呼吸を繰り返す口の端からは唾液が泡となって溢れている。
ドォンッッッ――!!!
そこに、間髪入れずに2発目が叩き込まれる。
『うあ゛あ゛ぁ゛ああ゛ああ゛あ――っっ!!』
まるで、巨人の肉棒を挿入されたように下腹部が盛り上がり、膣のひだ全てに電流が駆け巡って、子宮を穿つ。子宮内で暴れまわる衝撃はそのまま卵管を通って、卵巣までをも震わせていた。
1回ごとに背骨が折れそうなほどの衝撃を受けるエネルギーの奔流。四肢を拘束されているせいで、飛花はその全てを子宮で受け止めなければならない。外部から触れるとは言え、子宮も立派な内臓であり、ここを刺激されると、生理的な涙が止めどなく溢れてくる。副長のしぐれ、そして飛花含めて、過去に鐘突きを受けて泣き叫ばなかった者は誰1人として存在していない。どれだけ覚悟を決めていても1回目でその覚悟は虚しくも崩れ落ちる。
さらにこの鐘突きは、受ける者に苦痛を与えるだけでなく、仲間が泣き叫ぶ様子を見せられた者の心も折ろうとする。だからこそ、天津之黄泉では懲罰として使用されているのだ。
『ふっ……ぐぅぅ……こ、こんなものっ!』
ドォンッッッ――!!!
一片の慈悲も無く襲う鐘突きが食い縛った歯を強引に開かせ、濁った絶叫を観衆に聞かせた。1回ごとに見物客からは歓声が上がっている。
「いやぁああああっ!! 飛花ちゃんっ!!……あなた、早くこんなこと止めさせなさいっ!!」
真白が根室を睨み付ける。目尻に溜まった涙は頬を伝っていた。
しかし、根室はその言葉を無視し、真白のことを爬虫類のような気味の悪い笑顔で眺めている。苦しむ真白を見て興奮しているようだった。
その間も休む間もなく、飛花は鐘突きを受け続けており、真白の耳には飛花の悲鳴が入り込んで来る。耳を塞ぐことすら許されない。
『がっ……はっ……ぐっ……あっ…………』
その回数は早くも二桁に達しようとしていた。
全身をガクガクと震わせ、汗や涙、泡状の涎がポタポタと小ぶりの乳房へと垂れていく。意識も朦朧とし始めており、目は既に半分ほどしか開いていない。
『ははははっ、今ので14回目か。どうした? もう終わりか? お前がギブアップした瞬間、真白・ミューラーへの責めが始まるぞ』
『……っ!? ぐっ……ふっ……ぐぅぅぅ……』
その言葉に飛花は顔を上げ、気合を入れ直すためにぐっと歯を噛み締めた。その顔は〝これまで何も救えなかったけど、今度こそ……〟と言っているかのようだった。
その飛花の身体に15回目の鐘突きが撃ち込まれる。
『ぎゃあぁああああぁっ!!!! い゛っだあぁ゛ぁ゛っ!!!』
『もう、かなりお腹にダメージが蓄積してきたみたいだな。気を付けないと、これ以上は子宮が壊れるかも知れないぞ? 赤ちゃん産めなくなっても良いのか?』
鐘突きの前に陣痛責めが行われたことによって、飛花の下腹部のダメージは計り知れない。気を失っていないことが奇跡だった。
『ぜぇっ……ぜぇっ……ぜぇっ……お、お前ら、ドミネイターの子を産むための子宮なんて、いらない……それで、姉さんを救えるなら、安いもんだ……』
『へぇ、そうかよ』
そして、16回目の轟音――飛花は絶叫と共に口から血を吐き出した。激しく咳き込みながら吐血する。
「やめてぇえええっ!! お願いだから、もう止めてぇっ!!!」
悲痛に満ちた真白の慟哭が飛花の絶叫を掻き消した。
もう見ていられないと項垂れ、流れた涙が顎の先で1つになって地面へと垂れ落ちた。
「もう……止めて……飛花ちゃんが死んじゃう……私の処女を奪いたいのなら奪えばいいから……」
その言葉を待っていたとばかりに、根室の口が三日月の形に歪む。
「はて? 何か言いましたか?」
「私の処女を奪いたいなら、奪えばいいから……飛花ちゃんを責めるのは止めて……」
真白も飛花の考えと同じだった。〝自分の処女で飛花が助かるなら〟……迷うはずもない。
「人聞きの悪い。奪うなんて真似はしませんよ」
「なっ……!?」
ドォンッッッ――!!!
『う゛あぁ゛あ゛あ゛あぁ゛ぁあ゛あっっ!!!』
その間にも飛花への鐘突きは容赦無く続く。
「奪うことはしませんよ……ふふふ……〝奪う〟ことはね」
「――っ!」
その瞬間、真白は理解した。
根室は真白に処女を捧げさせたいのだ。真白本人の口からそれを言わせたいのである。
「そう言えば、あなたは私よりも鉄串の方が良いとか言っていましたね。その願いを叶えてあげましょう」
「う、うぅ……」
真白が躊躇いを見せていると、
ドォンッッッ――!!!
『あがあ゛あ゛あ゛ぁ゛っ――!! ガフッ……』
真白を急かすかのように鐘突きの音が轟いた。
飛花が再び吐血し、意識を途切れさせそうになっているのを見て、真白は決心する。
「わ、私は……て、鉄串に、処女を捧げますっ……」
その宣言はスピーカーを通して広場中に届き、見物人が大いに沸き立つ。
「……まだですよ」
「…………え?」
真白の必死の宣言にも関わらず、根室はそれを認めなかった。
「言ったでしょう? 女が男に愛を誓う時は自らの手で性器を開き、身体の奥の奥からの声でなければいけないと!! 当然、今回も同じですよ!!」
そう言うと、真白を拘束している人機に合図を出す。すると、真白の両手の拘束が緩み、手だけが自由になった。
「さぁ、その両手で力いっぱい拡げなさい」
スクリーンの映像が飛花から真白の顔のアップに切り替わる。その表情は絶望に染まり、小刻みに震えていた。
(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……!! けど、飛花ちゃんを守らないと……)
震える両手を自らの性器へと持っていき、指を大陰唇に添えると、ぴったりと閉じた淫溝をグイッと拡げた。