「あんたこそ、変わり者だぜ。いいのかよ、キョムから寝返ってこんな風に軍隊率いて。あいつらに目をつけられれば終わりだろ。シャンデリアから全部見てるんだ。どこへなりと安住の地を決めたって追いかけて来る」
『いい。私は、彼らの人生までは背負い込めはしないが、私は……これでいい。ちょうどいい十字架だ』
その言葉の節々に滲んだ感傷を、勝世は言及しなかった。
「そうかよ。なら、オレからも一個だけ。……逃げるよりも怖いことってのは、マジにあるもんなんだが、死地に向かうってのは別に違うと思うぜ」
『軽いかと思えば見透かしたようなことを言う。……もっと早く、会っているべきだったな』
「やめとけ、やめとけ。会えば殺し合いだ。それに、オレは野郎とはできれば会わない主義なんだよ」
『そうか。それは残念だ。いい戦士だと、思ったのは本音なのだがな』
《O・ジャオーガ》が道を阻む《トウジャ2型》を蹴散らし、《トウジャCX》が飛びかかる《トウジャ1型》を打ち据えていく。
互いに自然と背中を任せたように展開する中で、《O・ジャオーガ》の操主がふと、呟いていた。
『しかし、これも機縁と言うべきか……残念だ。戦場でしか、貴様とはもう会えそうにない』
「――ハッ! 青葉ちゃん……!」
『何を寝ぼけているんですか。勝世君、こちらは拾うのが大変だったんですよ』
友次の文句を受けながら、勝世は自分のほとんど大破した《トウジャCX》を抱えている《ナナツーウェイ》へと視線を配る。
「あっ……作戦、完了したんですね。お疲れ様です」
『お疲れ様ですじゃないですよ。……何で、あんな深部まで? 我々の目的とは違う場所でしょう?』
「あー……そりゃそうなんですがそのー……何て言うんですかね。気の合う奴ってのは、何も案外、味方である必要もないっつーのか……」
『分かったような分からないようなことを言いますね、君も』
勝世は銀盤の地平が爆発の光に押し包まれていくのを眼下にしてから、《トウジャCX》の操主席の上で、ふと呟いていた。
「……そういや名前聞いてなかったが……まぁいいか。野郎の名前なんて聞いたって覚える気はねぇし」