小夜はなるほどね、と頷く。
「作木君なりのオリハルコンとの付き合い方と、私の付き合い方は違うってことか」
「それこそ、千差万別なんじゃない? オリハルコンと創主の関係性なんてさ」
ナナ子は台所で夕飯の支度をしている。
「創主様! 私の自由研究が一番でした!」
「あらあらぁ……レイカルってばそれは驕りよぉ……。私のが一番でしたから、作木様」
「お前ら……っ! それを言うなら私だって……!」
「よく言うわよ。三時間で仕上げたくせに」
小夜がぼやくと、カリクムは困り果てる。
「そ、それはぁ……か、感謝はしているよ。……ありがとう、小夜」
「どういたしまして。……今度からはもうちょっと早く言いなさい。それなら、作木君とレイカルたちじゃないけれど、ちゃんとサポートしてあげる」
どうやら彼女らの絆がまた一歩、前に進んだらしい。
「さぁ、今夜もナナ子キッチンの始まりよ! 残暑で疲れが残る時はこれ! スタミナ満タンの肉料理をお届けするわ!」
威勢よく料理を始めたナナ子を視界に入れつつ、作木は隣の小夜へと尋ねる。
「……でも、よかったのかもしれませんね」
「よかったって、自由研究が?」
「はい。オリハルコンにもちゃんと……自由意思があるって言うか、彼女らの考えを尊重できるのなら、僕はそれで」
「それ以上は、高望みはしないってことね。……なるほど、作木君らしいわ」
でも、と小夜は言葉の穂を継ぐ。
「もうちょっと……手伝ってあげたかったのよ。だって私とカリクムは、ただの創主とオリハルコンだけの関係性じゃ、ないはずなんだもの。言ってしまえば一蓮托生、そうね。一心同体と言っても、いいのかもね」
――自由研究の課題に対し、採点するヒヒイロは全員分の宿題を精査し終えていた。
「なるほどのう……こう来たか」
カリクムが一日ででっち上げたのは「オリハルコン観察日記」だ。
レイカルたちの能力と戦闘力、それに得意なものや苦手なものを記載している。
カリクムなりに必死に描いた各々の姿のスケッチと、無数に注釈があるのは往年の怪獣図鑑を想起させる。
レイカルには「戦闘バカ」、ウリカルは「真面目ないいヤツ」、ラクレスには「色ボケ」と細かいカリクム特有の記述もある。
「よかったんじゃないか。ちゃんと自由研究を提出するよくできた生徒を持てて」
「ええ。それに、皆独創性があって、これからが楽しみです」
そう結んでヒヒイロは提出物に花丸を贈っていた。
試行錯誤とそれぞれの個性に対して、最大限の「たいへんよくできました」を――。