《ナナツーライト》の痩躯に無数の循環ケーブルが繋がれた状態は、まるで装置に雁字搦めにされたかのようにさえも映る。 ケーブルの辿る先は機体の番えた長距離ライフルの砲身であった。 『《ナナツーライト》へ。撃鉄、起こせ』 […]
カテゴリーアーカイブ:JINKINobel/著 シチミ大使
JINKI 77 アンヘルの御守り
ふわぁ、と欠伸を噛み殺した南は懐中電灯の明かりで見渡していた。 「……格納庫の見回りってかったるい……。人が居ないと言えばそうだけれど……」 ひとまず格納庫に収まっている人機のチェックと、それから電気設備の点検。自衛 […]
JINKI 76 ルイとさつきの算数教室
「あっ、こら! ルイ! 逃げるなー!」 「や、よ。何でそんなこと、やらなきゃいけないの」 境内で追いかけっこをしているルイと南を目に留めたさつきは、茫然と眺めていた。 「……ルイさんと、南さん? 何やってるんだろう…… […]
JINKI 75 アンヘルと愛妻弁当
「あっ……小河原さーん! 何やってんだろ……野球?」 買い物の途中で河川敷から両兵の声が聞こえたので、呼びかけると少年たちが一斉に指差した。 「あっ、両兵! キレーなお姉さんが呼んでるよー!」 「あン? そんな知り合い […]
JINKI 74 思い出が醒めないうちに
キャッキャッと歩き回る群衆をじっと睨み据え、両兵は嘆息を漏らしていた。 「ねぇ、両兵。何でそんなに機嫌悪いのさ」 「何でも何も……そもそもどうして、てめぇなんかと」 周囲には女子供や、家族連れが目立つ中で、自分とエル […]
JINKI 73 勇気は花に、想いは胸に
「ん? 何してんだ? さつき」 はぅわっ! と肩を震わせたさつきは、こちらを見るなり何だと安堵する。 「お兄ちゃんかぁ……。五郎さんかと思っちゃった」 「何でオレだとまずいんだよ。それ、何だ? 紙をくしゃくしゃにしてっ […]
JINKI 72 金色の黄昏に
「おっ、小河原さん。今日も一杯どうだい?」 河川敷で野良暮らしをしている仲間に声をかけられ、両兵はソファに寝転びながら手を振る。 「おーっ、楽しみにしてっわ。じゃあ今日は腹減らしとくか。……ちょうど柊も来ねぇし、街ぶら […]
JINKI 71 想い、桜の下で
「……なぁーんか、呑気だよな、連中」 ぼやいた両兵に隣に座った南が首を傾げる。 「そう? 日本人ってみんなこんなもんよ?」 「……分かんねぇのは、何でオレが、朝の五時からこんな場所でわざわざ張らなきゃならんのか、という […]
JINKI 70 ヘルタワーを追え!
――なぁ、聞いたことあるか、と船員が問い質していた。 何てことはない、世間話の一つ。漁船ではしかし、そういう「噂」が絶えない。海の上に火の玉を見ただの、海坊主に行き会っただのという、取りとめのない話。誰かの退屈を紛ら […]
JINKI 69 匿名者より
部屋中に巻き散らかされたケーブルに、赤緒は辟易していた。 「……もうっ。立花さん。散らかしっ放しじゃないですか……」 「あー、それ? 今必要だから置いといて。データ取るのにこっちの電源だけじゃ不足していてさー。もうちょ […]