JINKI 58 南米式友情の証2

「お茶うけを持ってきましたよー……って、あれ? 皆さん、どこへ?」  首を巡らせたさつきは、軒先で巨大な筐体をいじっているエルニィを発見していた。 「あの、立花さん。皆さんは……」 「あー、なんか自衛隊の視察だってさー。 […]

JINKI 57 白鯨の討ち手

 静謐に沈んだ湖畔は月明りを映し出している。  蒼く染まる夜、付近の木々より鳥の鳴き声が朗々と響く中で、半ば泥に塗れたジャングルの小道を亜熱帯仕様が施された《ナナツーウェイ》が歩んでいく。  乳白色の標準型だが、熱に強い […]

JINKI 55 銀と黒

「――ヒトは、罪を被って生まれてきた、と我々は定義します」  教会に響き渡ったその声音にぼろを身に纏っていた信徒たちは、おおと声を上げていた。  どれもこれも、見渡せば些事なるもの。そう断じた金髪のシスターはその銀色の瞳 […]

JINKI 54 荒れ狂う運命を超えて

 輸送されてきたコンテナに収まっている人機のデータに、エルニィは眉根を寄せる。 「……南米戦線からの払い下げかぁ……。あまりにごてごてしていて、ボクはあんまし好きじゃないんだけれど」 「この際、選り好みはしていられないわ […]

JINKI 53 あたたかな今を

 こたつを挟んで二人が気まずそうに対峙していた。  一方はどこかばつが悪そうに。一方は、茶をすすって落ち着き払っているが本意ではないとでも言うように。  視線に耐えかねて青葉は口を開いていた。 「……あの、やっぱり怒って […]

JINKI 52 第百四十五次定例会議事録

『――これより、第百四十五次定例会を行う』  浮かび上がったのはそれぞれに動物の意匠を凝らしたマスクを持つ者たちだ。  互いの素性は割れていても、こうして道化を演じ続けるのは、表舞台での自己とここで発言するものは分けられ […]

JINKI 51 ティータイムの前に

 むすっと頬をむくれさせたメルJの気迫に、赤緒は何も言えなくなっていた。  彼女には珍しく、居間に座り込み、徹底抗戦の構えである。  もっとも、それはメルJだけでなく、軒先で同じように目線を逸らしているルイも、なのである […]

JINKI 50 素直になれない背中

 初めて試合中に足を折った時、どうしようもない、と思ったのをよく覚えている。  数式の見える眼がもう使えなくなった頃だ。  だから、足が治るまでの物理的な演算も、ましてや計算式も見えないのはまさしく暗闇の中を行くようで、 […]

JINKI 49 モリビトの軌跡

 ジャングルを突き進んだ代償は大きい。  毎回土くれまみれになる《モリビト2号》の装備点検と、そして洗浄は整備班の日課になっていた。  湿地帯に突っ込むことも多い人機には錆びも大敵だ。全身隈なくチェックする川本へと、青葉 […]