JINKI 225 可能性のひとしずく

 金枝は呆気に取られたようにそれを眺めてから、小さくこぼす。

「……綺麗……」

「どこかで手に入れたのか、私は詳しくは知らんが、案内してくれた礼だ。三宮、と言ったな? お前がどれほどの使い手なのかは分からんが、同じアンヘルだ。――いずれは肩を並べて戦えること、少しは祈っている」

「わ、私もそうです! 三宮さん、一緒にキョムと戦いましょう!」

 さつきの言葉も受け、金枝は少しうろたえた様子で後ずさる。

「な、何ですか……。そんな風な感情をぶつけられたら……金枝はどうすれば……」

「三宮だっけ? 素直に、その時を楽しみにしてる、でいいんじゃない?」

 エルニィの助言に金枝はどこか魅せられたようにその言葉を咀嚼した後に、頬を赤らめる。

「か、金枝は……い、いえっ、いえっ! そう簡単に心を許してはいけません! そういうものですし、金枝の沽券にかかわります。……ですが、頭の片隅にはその……置いてあげても、いい、です……」

 髪の毛をくるくると巻きつつ、唇を尖らせた金枝に、メルJはエルニィへと視線を送る。

「……これも計算のうちか? 立花」

「まさか。けれど少しは……安心できそうだね。何よりも、仲良くするのが一番のはずなんだからさ!」

 たとえ京都支部で共に戦う時が来たとしても――三宮金枝と言う少女を、今は忘れまい。

「――とか何とか言っちゃって、うまく行ったって思っていいのよね?」

 問いかけて来た南にエルニィは応じる。

「まぁね。メルJは三宮とどっかでぶつかりそうだし、ここいらで先に緩衝材を作れたのは大きかったかも。さつきは案外、素直に受け止めてくれたし。まぁ、ルイがどうのこうのってのは初耳だったけれど。……意外といい子じゃん、三宮金枝」

「そりゃあ、あんた。私が見出した操主候補ですもの」

 ふふん、と得意げな南にエルニィは筐体を弄りつつ言葉を飛ばす。

「けれどいいの? いい子ほど、ここから先が辛くなるかもよ?」

「……それも考えのうちには入っているわ。けれど、可能性を信じないわけにはいかない。違う?」

「……だね。南の審美眼を今は信じるかぁ……。でも、一番意外だったのは、家の問題があるって言っていたじゃん。大丈夫になったの?」

「あー……まぁそれに関しては追々……ね? 何も一足飛びに問題解決しようって言うんじゃないのよ」

「……それもそっか。何にせよ、三宮金枝……悪い子じゃないのだけは、安心したかな」

「京都支部が何を考えていようとも、私たちには培った絆がある。だったら、信じようじゃない。そう簡単に、崩れるものじゃないって」

 たとえ現状が変化し、金枝との関係が変容しようとも――それでも信じられるもののために、今は明日を見据えて。

 南も自分もその時へと至る可能性としての日々のひとしずくを、ただ待ち望もう。

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