「……赤緒、その……大丈夫……だろうか?」
不安そうにするメルJに、赤緒は頷く。
「……ええ、大丈夫……ですね。ヴァネットさんはきっと、いい飼い主として、次郎さんに認められたんだと思います」
「そ、そうか……? 私がいい飼い主、か……」
とは言え、どこかおっかなびっくりなのには違いない。
赤緒はメルJの握るリードを、そっと自分の手で包み込む。
「大丈夫ですっ。ヴァネットさんの優しさ、きっと次郎さんにも伝わっています」
「……そ、それならばいいのだが……。赤緒、手を離さないでくれよ……。急に走り出したら、私ではどうにも止められん……」
「ええ、じゃあ、その時には二人して走り出しましょうか。次郎さんも自分のペースで、歩いてくださいね」
ぷぎっ、と次郎が鳴き声を上げる。
今だけは――両兵の言っていた次郎には言葉が分かると言うのも、信じてみたくなっていた。
「むむっ……じゃあ、行くぞ……」
少し恐怖心が勝っているようだが、それでもメルJなりの歩み寄りだ。
なら、それを尊重するのが、自分にできる唯一の。
「はいっ! 行きましょう、ヴァネットさん、次郎さんも!」
次郎が僅かに駆け出す。
つんのめった彼女の横顔が、少しだけ新しい体験に微笑んでいたのは、何も間違いではないはずなのだから――。