『事実、そうなのだと言わせてもらおう』
その言葉が一線を超えていた。
カリスが保持しているブレードを翳し、敵と相対する。
『決めたァ……! 殺す!』
《バーゴイルシザー》が駆け抜け、漆黒の機体へと相対していた。
分かっている、カリスとて空中ファントムくらいは会得しているそれなりの強者だ。
だから、この場で心配すべきは彼の安否ではなく――。
「……私のほうだと、言うことですか」
『八将陣ハマド、それなりに賢い選択だと言わせてもらう』
「気に入りませんね、その論調。そしてカリスは気付いているのでしょうか……この違和感に……。だがだとしても……!」
直後、《K・マ》の盾の防衛網を叩き据えたのは弾丸の雨嵐であった。
残存する十二機の機体よりもたらされた、灼熱の応酬の名は――。
「……これは……まさか、アルベリッヒレイン? これを使うと言うことは、やはりその機体……ッ!」
『勘付いた時には既に――何もかもが遅い』
他の機体を指揮しているのは、黒き翼を翻す使者。
「……まさか。《ダークシュナイガー》、だと……」
《ダークシュナイガー》の形を取った敵影が刃を掲げて有り余る能力を駆使する。
火力を即座に粉砕力へと転化し、ブレードの切っ先へと一点集中する、突貫攻撃。その名を、自分は知っている。
『逃がしはしない。――アンシーリー、コート!』
黒に染まった天蓋の向こう側から、一直線に《K・マ》へと向かうのは白銀の翼であった。
一撃がリバウンドの盾に食い込み、その単純な破壊力だけで亀裂が走る。
「まさか……しかし、その声に、その技の冴え……! あなたは、死んだはずだ! 八将陣、マージャ!」
『最早、そのような名前ではない』
断ずる響きを伴わせて、《ダークシュナイガー》の機体が眼前に佇む。
守りを崩された《K・マ》はここまで脆かったか、という疑念が鎌首をもたげる前に、他の機体が絶対的な天の使者の如く降臨する。
半壊した《バーゴイルシザー》の機体の頸部を握り締め、そしてパッと手離す。
飛翔の力を失った黒の翼の担い手は、彼らの意のままだ。
『殺すな。《バーゴイルシザー》も、《K・マ》もまだ使える駒だ』
「……マージャ……。何故です? 何故……地獄から蘇ったのです……」
『それを知るのには、貴様らはまだ早い。踊ってもらうぞ、この地獄の業火に焼かれし世界で。我ら、グリムの眷属のためにな』
「……グリムの……眷属……」
その名称を問い返すような気力は、ハマドには残っていなかった。
暗礁に堕ちて行く意識の片隅で、嘲笑の声だけを拾い上げる。
『我々は地獄から舞い戻って来たのだよ、ハマド。……悪く思うな』