シバなりの考えがあるのだと言うことは分かったが、それでも飲み込み切れないのは、相手の編隊に組み込まれた八将陣の二人だけではない。
降り立った自分たちが、何もせずに敗走――それだけでアンヘルだけではない。対立勢力に与える影響は違ってくる。
「……分かっているの? 私たちが何もせずに退くって言うのは……」
『承知している。その上で、だ。ここは退き時だ、ジュリ』
譲るつもりのないシバの声に、ジュリは忠誠の声を返すしかない。
「……了解」
シャンデリアの光が自分たちを押し包む。
一瞬にして制空権を取れるこちらの優位が揺るがないことからの、慢心と思われても何らおかしくはない。
否、それ以上に戦局は悪いだろう。
キョムの誇る、八将陣の戦略的撤退は、どの勢力にとっても異様に映るに違いない。
「……けれど、あんたには……考えがあると思っていい、のよね?」
シバは応えなかった。
「――消えましたね」
Jハーンの声にドクターオーバーは改めて宣言していた。
「これで準備は整った。ロストライフに怯えてきた者たちよ! 我がグリムの眷属の力を見たであろう! キョムに対し、我々は圧倒できる。その事実を噛み締めない愚鈍な者たちではなかろう。ここに! 時代は移り変わるのだ……! 東京だけではない、ここをはじめとして世界中に死の雪が降り積もる! そして果たされるのはロストライフではない。――ライフエラーズ。それを目の当たりにするがいい」
白銀の光雪が東京上空より降りしきる。
ヒトの体温を無情に奪い、そして死の先へと赴かせる――人類は死を超越する。
それこそが「ライフエラーズ計画」。
ヒトである証を失った亡者たちが、今に都心を闊歩するであろう。
その情景を思い浮かべ、ドクターオーバーは紅を引いた口角を釣り上げていた。