めいめいの言葉を聞きつつ、さつきは赤緒に了承を問う。
「……いいですよね? 赤緒さん」
「いいけれど……でも、皆さんの写真まで入れちゃうのは……」
「何言ってんのさ。ボクらだってもう、ほとんど赤緒の思い出みたいなもんじゃん。……ま、徳川埋蔵金じゃないのはがっかりだけれどねー」
「そうね。一攫千金を狙えると思っていたのに。境内にたくさん穴だけ開いちゃったわね」
「境内に穴……って、あーっ! こんなに穴ぼこだらけにしちゃ駄目じゃないですかぁー! もうっ! 神聖な場所なんですよ、神社って言うのは!」
「また始まっちゃったよ……。けれど、まぁ、ボクらの写真入れるのは賛成。五年後、十年後、か。どんな風になってるんだろうね、ボクら、仲良くいられるかなぁ」
「……別に反対する流れじゃないし」
「私も! 賛成です! 赤緒さんも、タイムカプセルに一人っきりじゃ、寂しいですよ」
自分の言葉に赤緒は実感が湧かないのか、うーんと首を傾げる。
「……でも、垢司さんの言っていたのってそういうんじゃ……」
「何言ってんのよ、赤緒さん。思い出を詰めるのがタイムカプセルの醍醐味なんだから。私たちの思い出、目一杯に詰め込みましょ」
南の言葉で余っている写真をタイムカプセルに再度詰め合わせ、それから元のように金属製の菓子箱へと何重にもガムテープを張る。
「……でもさぁ、本当のところ、どうなんだろうねー。五年後どころか二年後とかも想像できないや」
「私も同じく」
「あんたらねぇー、二年って言ったって色々あったでしょ? ここに集まるまで。何もなかったとは言わせないわよ」
「……まぁ、あったかな。色々は」
思うところはあったのか、エルニィは頬を掻く。
ルイも少しだけ照れた様子で《ナナツーウェイ》が土をかけて戻していく様を眺めていた。
「……さつき、あんたにしちゃいい落としどころを見つけたじゃないの。赤緒からは言い出せなかったでしょうね。私たちの思い出も一緒こたにして、もう一回埋めようなんて」
「……そう、ですかね……? けれど、それってとっても、尊いことだと思えたんです。だって、赤緒さんの三年分に、私たちも一緒の時間を過ごせるんですから。土の中とは言え、想いは一緒だと思うんです」
すかさずルイにデコピンされ、じんと痛む額を撫でる。
「恥ずかしいことは禁止。……まったく、本当にあんたはそんな調子なんだから……」
今はこの痛みでさえも、愛おしい。
「……はいっ。私、こんな調子ですからっ」
「とは言え、徳川埋蔵金はやっぱりないかー。これって役に立たないのかな?」
ダウジングマシンを握り直したエルニィが胡乱そうな視線を注ぐ。
「まぁ、結局は筋肉の震動だとか、夢のない話なんでしょうね。これだけ何もないってことは」
「がっかりだなぁー。……って、おっ……開いてく……けれど、これも気のせいかな?」
さつきが視線をやると、エルニィとルイが交互に土を掘っていく。
「……さつきちゃん、ありがとうね」
そっと赤緒に囁かれて、さつきはいえ、と頭を振る。
「……きっと、思い出ってたくさんあったほうがいいんです。赤緒さんだけのタイムカプセルにしたかったんだと思うんですけれど、でもこういう風に、騒がしかったり、自分一人じゃ抱え切れない想いがあったほうが多分……生きていくって感じなんだと思います」
「生きていく、か……。垢司さんはそれを伝えたかったのかな……?」
柊垢司の真意は分からない。
だが、赤緒がたった一人で未来を前に立ち竦むのは望んでいないだろう。
ならば、未来のこの場所で――きっとまた、アンヘルの面々で。
「皆さん、呼べばよかったですね。お兄ちゃんとかも……」
「そう……だね。でも、今は五人分のタイムカプセルでも、多分……」
――いずれは菓子箱に収まり切らないほどの思い出をたくさん――。
それは言われないでもさつきには伝わっていた。
《ナナツーウェイ》がタイムカプセルを埋め直したところで、エルニィとルイが掘り当てたのは缶詰であった。
「……缶詰? 何だってこんなところに……」
すると、次郎が地面を掘って金属類を埋めているのを視界の隅に発見する。
「……小動物の仕業じゃん。ルイー、主人でしょー? 何仕込んでんのさー」
「……そういえばカナイマじゃ、保存食を少しでも持たせるために土に埋める癖があったわね」
「なぁーんだ。じゃあやっぱインチキかー」
ダウジングマシンを放り投げたところで、赤緒が注意を飛ばす。
「あっ、立花さんっ! 境内にゴミを捨てないでくださいよ!」
「いつもの感じに戻ったじゃん。さっきまでの恥じらう赤緒も貴重だったけれどねー」
「……もうっ!」
二人して笑い合うのを目に留めて、さつきはダウジングマシンを拾い上げる。
「でもいつかは……大切なモノを見つけられる、そんな時に頼っても、いいのかも」
埋蔵金より価値のあるものはきっと、今も胸の中に――。