「さぁ! 今日も今日とてナナ子キッチンの開幕よ! 乾家直伝のお鍋をご賞味あれ!」
汗ばむ季節を超え、こうして冬はやって来る。
その前の、少しだけ気持ちが落ち着く秋と言う季節に感謝を。
だってそこには、見落としかねない些細な出会いと当たり前が、こうして隣にあるのだから。
「じゃあ……みんなで食べようか」
「キンローに感謝です! 創主様!」
「――カリクム……カリクムってば!」
ぺしぺしと頬を叩かれてようやくカリクムは身を起こす。
「うん……? あれ、今日ってなんかの日だっけ……?」
「何寝ぼけてるの? あんた、朝早くに起こしたっていいって言ったじゃないの」
「うーん……そんなこと言ったか? ふわぁ……、まだ眠い……」
「起きなさい! ……たるんでるわよ、そういうの!」
カリクムはトレーニングウェアに身を包んだ小夜を視界に入れて、げっ、と声を出す。
「何だよぉー、小夜。変なやる気出しちゃって……」
「これから冬になるんだから! 毎日トレーニング、朝のジョギングにあんたも付き合いなさい! ちょうどいい目覚ましになるでしょ?」
「……いや、それはちょっと……」
布団を手繰ろうとして小夜に取っ払われ、首根っこを引っ掴まれる。
「下手な抵抗はためにならないわよ。さぁ、行きましょうか」
「ナナ子ー、何でこんな目に遭うんだよー……助けてくれってばぁー」
その声にナナ子は寝ぼけまなこを擦ってカレンダーを見る。
「……今日は土曜日、勤労感謝の日ね。祝日か……ぐぅ」
再び寝入ったナナ子にカリクムが抗議する。
「こういう時って一緒に来るもんじゃないのー?」
「グダグダ言わない! さぁ、とっとと走り込み行くわよー!」
小夜に引き連れられ、カリクムは秋の深まった早朝を走る。
痛いのが嫌いな自分にとって、刺すような寒さは何よりも辛い。
「こんなのってないだろー! 勤労感謝の日なんて大嫌いだー!」