がんもどきを頬張ると、カリクムは自然と両目に涙を溜める。
「……冬の、クリスマスに食べるおでんって……何でこんなに目に沁みるんだろうな」
「さぁね。けれど、こうして一緒の時間を過ごすのも、悪くないでしょう?」
「……かもしれないな」
ナナ子がクリームシチューを運んでくる。
おでんを食べ終えて、満足してカリクムがベッドに戻った際、小夜はさてと、と肩を回す。
「ナナ子。ここからが本番だからね。……協力してよ」
「もちろん。思えば、私たちの親もこうだったのよね。……子供の枕元に、そっと一年の思い出となるクリスマスプレゼントを置くって言うの。軽んじていたわけじゃないけれど、結構ドキドキするもんね」
「……そうね。だからこそ、夢を壊したくない、か」
カグヤの想いを引き受け、小夜はカリクムの枕元にラッピングが施された正方形の箱を置く。
「メリークリスマス、カリクム。私からの精一杯の……あんたとの思い出づくりのつもり」
――後日。
「サンタからプレゼントをもらったぞー! どうだ! カリクム、この戦闘力の高さを!」
レイカルには赤い手袋が贈られている。
ナナ子と作木の合作だ。
シュッシュッとジャブをしながら自慢するレイカルにウリカルも特製ジャケットの襟元を整える。
「その……小夜さん、ありがとうございます」
「いいのよ。サンタがくれたものなんだからね」
「ふん。本当にお子ちゃまばっかりなんだから困ったものよね」
そうは言いながらもカリクムはいつもの服とは違う、赤いワンピースに身を包んでいた。
「赤い戦闘服か! くそぅ、ちょっと羨ましいぞ、カリクム!」
「……戦闘服じゃないっての。小夜、それにナナ子もなんだろ? ……ありがと」
「いいのよ、別に。だって私たちはサンタクロースに頼んだだけだしね」
ナナ子へとアイコンタクトを送る。
心得た様子の彼女は微笑んでいた。
「そうよ、カリクム。サンタクロースは聖夜には大忙し! けれど一年間、いい子にしていたからプレゼントをくれたんだからね」
きっと、いつかは醒める夢なのだろう。
しかし、だからと言って醒める時を惜しむことがないように。
こういう夢を見られた――それ一つだけでも子供時代は輝くはずだ。
サンタクロースも、クリスマスも夢の欠片そのもの。
信じることと夢見ることは、等価であるのだから。
「さぁ! じゃあ毎年恒例、クリスマスケーキを切り分けちゃいましょうかしらね」
ナナ子がチョコレートケーキを切り分けようとする。
それを前にしてレイカルたちが盛り上がる中で、カリクムは少しだけ素っ気ない。
「……カリクム。今日はクリスマスなんだから。もうちょっと元気にしなさいよ」
「……あのさ、いつまで信じていればいいんだろうな。サンタもクリスマスの奇跡も。だって、どれもこれも……あまり信じ続けても馬鹿を見るって言うか……」
「けれどいい馬鹿なんじゃない? 夢を見ることに、馬鹿も賢いもないわよ。あんた自身、それは分かっていると思っていたけれど?」
店の灯りを消し、ロウソクへと火を点けていく。
「灯りを消すのは私だー!」
誰よりもハイテンションなレイカルに、カリクムは呟く。
「……そう、なのかもな。クリスマスくらい、子供っぽくなったって……おい! レイカル! 灯りを消すのは私なんだからな!」
レイカルとカリクムが押し問答を始める。
その模様を眺め、小夜は小さくこぼしていた。
「そうね、私から言えることは……メリークリスマス、カリクム。また一年間、よろしくね」