「……両、それは男子の意見ね。女子は色々あるのよ」
「そうかぁ? お前もそうなのかよ、黄坂」
「私? 私は……別にかも。まぁルイを育てるので精一杯のカナイマで自分の身長がどうのこうのなんて考える暇なんてなかったわよ」
「だろ? そういうもんなんだっつーのが分かんねぇのかな。自然と伸びる奴は伸びるし、チビなまんまの奴はチビなままさ」
「赤緒! ボクらはもう寝るからね! おやすみ!」
「た、立花さん……っ! 歯は磨かないと虫歯になっちゃいますってば!」
「知るもんか! 質のいい睡眠こそが身長を伸ばすコツ! 今日からボクは八時間睡眠を心掛けるからね! 途中で起こさないでよ!」
「お、起こさないでって……どうせ全然起きて来ないクセに……」
赤緒もしかし、さつきと視線を合わせて牛乳をコップ一杯分飲んでから、よしと頷いている。
「……さつきちゃん。私たちってもしかして……朝早く起きているせいで身長伸びないのかなぁ……」
「大丈夫ですよ、赤緒さん。私は……まぁちっちゃいですけれど、赤緒さんはまだまだ伸びしろがあるじゃないですか」
「そうかなぁ……」
彼女らの懸念を聞き留めつつ、両兵はぼやく。
「……背丈が高いだの低いだの、気にしてる間は変わンねぇもんさ」
「……そうだろうか」
いつの間にか縁側に歩み寄って来ていたメルJは心底憂鬱そうに嘆息を漏らす。
「……お前はオレと同じくらいだろうが。何を悩むんだよ」
「いや……背の高い女など可愛げがないと思われるのではないかと考えてな。実際、赤緒くらいの背丈のモデルが多いのも事実だし……」
何やら別ベクトルで参っているメルJへと、両兵は声をかける。
「……あのなぁ、世の中、身の丈に合うって言葉もあるんだ。無理して背丈を高くしたって同じことさ。シークレットブーツってのはそりゃ、物理的に背は伸びるんだろうが、そいつの物差しじゃねぇ。その時点で違うってもんだ。自分でこれまで抱えてきた経験値だろ? なら、それでいいじゃねぇか」
「だが……背が高いといいことなんて何もない。モデル界隈では仕事が来るのはありがたいが……靴のサイズも合わないことのほうが多いし、背が高いと服選びにも一苦労で……」
「何だよ。てめぇらしくもねぇな。くよくよしてんじゃねぇよ。自分の身の丈を誇るのに、秘密の背丈なんて必要か? オレは自分なりの身の丈をちゃんと分かってるてめぇのほうが立派だと思うぜ?」
「両も言うじゃないの。……メルJ、あんたなりの歩み寄りでいいのよ。そりゃー、背が高いのはちょっとは羨ましいけれどね。でも、背丈が何だって言うのよ。あんたはあんたの積み重ねでここまで来たんだし、ね?」
「小河原……それに黄坂南……。そうだな、お前らがそう言うのならば……誇りに、思っていいのだろうか。この可愛げのない背丈も」
「可愛げなんて後からでも付いてくらぁ。オレはお前のプライドどっぷりの背丈も別に可愛げがねぇとは思ってないがな」
「……何だ、それ。全然慰めじゃないぞ」
「アホ、慰めなんて言った覚えはねぇよ」
お互いに言葉を譲らず、しかし居心地は悪くなかった。
メルJは立ち上がり、それから告げる。
「……ありがとう、小河原。少し……楽になった」
「そりゃー、どうも。それにしても、シークレットブーツねぇ……」
両兵はためしに居間に散乱している靴の中から自分の足のサイズに合うものを選び、それから履いてみせる。
五センチほど視野が高くなるも、やはり、と取り下げていた。
「これは、オレの身の丈じゃねぇな。そういうもんさ、世の中ってのはよ」