「この時のためのもんだったんだろ? 使わない手はねぇ。それに……オレは言ったよな? 戦う気のねぇ奴に手ぇ貸すつもりはねぇが、戦う意志のある奴なら歓迎だってな」
エルニィはとことん参った様子で、嘆息をつく。
「……まったく。両兵のことをボクも誤解してた。まだまだだなぁ。……ほら、こっち!」
エルニィに手招かれた先で白い靄の向こうで寝かされたトレーラーに行き遭う。
緑色のほろを被ったそれを取り払った瞬間、露になったのは――。
「……これ……モリビト……?」
「近代改修した奴になる。米国から払い下げられた訳アリ商品。《モリビトZ-1》。そのままじゃ血続操主の力を吸い上げる問題作だったのを、何とか間に合わせた! ――名を《モリビト燦号》! ペーパープランでしかなかったモリビトタイプの三号機さ!」
「《モリビト燦号》……」
魅せられたように金枝はその機体と向かい合う。
白色の基本骨格にオレンジ色の装甲を被せられた機体は、眩しくその装甲を照り輝かせている。
「……立花。この《モリビト燦号》なら、京都支部のジャミングからは逃れられそうなんだな?」
「……まぁね。一応、色々な技術的問題点はまだあるんだけれど、でも大丈夫。ちゃんと戦えるよ」
エルニィがこちらへとウインクを寄越す。
「……モリビト……なら、基本は同じのはずですよね」
「ああ。何よりも天号にお前を乗せちまえば相手の思うつぼだ。なら、これくらいの隠し玉で向かったほうがいい。それにこっちの戦力の増強にもなる。立花、こいつ――」
「皆まで言わない! 下操主席は既にカスタム済み! ……両兵ならそう言い出すと思ってのことだよ」
どうやらエルニィと両兵は以心伝心らしい。
お互いに心得た距離に、金枝は霧に煙る《モリビト燦号》へと視線を振り向ける。
「……三宮、こいつならお前の力も存分に活かせるはずだ。ただし、ビートチューニングだったか? あれを使うかどうかはオレも判断に噛ませてもらう。簡単にゃ使わせねぇつもりだ」
下操主を務めてくれるのならば、金枝も力を使う以前に責任がある。
即ち――勝利するために戦う、と言う責任だ。
「……望むところです。小河原両兵。金枝を……勝たせてください」
その言葉に挑発を受け取ったとでも言うように両兵は口元を緩ませる。
「……上等……! 言っておくが、今さら降りてぇとか言い出すんじゃねぇぞ」
「そっちこそ。金枝が上を務めるんです。……降りたいなんて泣き出したって聞きませんから」
そっぽを向くと両兵は肘で小突いてからエルニィに依頼する。
「じゃあ頼んだぜ。……勝つためにどれだけでも策を使う、ちょうどいい心意気だ」
「……両兵。悪い顔してるよ。……けれどまぁ、それでこそメカニックのやる気も出るってもんだよ。さぁ、みんな! 勝つための戦いをしに行こうか……!」