JINKI 301-20 望む結末のために

 南は金枝へと向き直っていた。

 金枝も自ずとこちらの眼差しと交錯する。

 ――逃げない。ここで逃げてしまえば、それだけは絶対に後悔する。

「三宮さん。改めて、トーキョーアンヘルの責任者としてだけじゃない。黄坂南と言う一個人としても言わせて。――私たちと一緒に、戦ってちょうだい」

 金枝だけを特別にしない。

 操主になることを決意した少女たちは、誰もが等しく特別だ。

 きっと自分はこの瞬間をずっと怖がっていた。

 金枝を特別な場所に置いて、それで自己満足していた。

 彼女の問題を棚上げして、それで決着の機会を逸し続けて。

 ならば、今しかないではないか。

 もう彼女の問題は、他のメンバーと殊更違った問題はない。

 赤緒も両兵も、踏み込んだはず。

 責任者である自分が一番怖がってはいけないはずなのだ。

 金枝の肩は震えている。

 本当に信じていいのか、という躊躇いだろう。

 実際、アンナに見捨てられたと思っているはずだ。

 大人びたような、確実なことなんて一個も言えやしない。

 立派な人間ぶった、格式で固めた言葉なんてお呼びじゃない。

 今はただ、一人の人間として金枝と向き合うべき時であった。

「……南さん。金枝は……もう一度誰かを、信じてもいいんでしょうか」

 分かっている。怖いはずなのだ。

 きっと今まで散々裏切られてきた。散々、酷い目に遭ってきた。

 だからと言って、金枝を遠ざけていていいはずがない。

「……もちろん。だって私たちはもう、家族じゃないの」

 これが適切な言葉だったのかは分からない。

 もっといい言葉があったのかもしれない。

 それでも、剥き出しの自分はこの言葉を選んだ。

「……南さん。金枝は……まだハッキリとは言えません。けれど一個だけ、約束してもらえませんか? この決着がついたら、金枝は――」

 その決意に南は呆けたように茫然とする。

 しかし、それがどれほど無謀でも、自分は叶えてあげなくてはいけない。

 それが人機操主になって欲しいと願ったことへの代価だ。

「……分かったわ。約束する。だから、三宮さんは憂いなく、戦い抜いてちょうだい。後ろは私たちがサポートする。前は……きっと両が同じような言葉を発してくれるでしょうし。隣には、もちろん――」

「赤緒さんたちが居る、ですよね」

 先回りしたように口にされて、南は破顔一笑していた。

「……やっぱり、敵わないなぁ、赤緒さんには。……うん。あなたを一人にはさせない。充分に戦っていらっしゃい」

「……はい。金枝と、《モリビト燦号》が……終わらせます……ッ!」

 決意した少女の瞳の眩しさに、南は暮れかけた京都の街並みへと視線を振る。

 吹き抜ける夏の気配をはらんだ風。

 そうだ、もうすぐ夏が来る。

 山間を染め上げる金色の落陽に、南は一言だけを添える。

「……夜が来るわね。昏い、夜が……」

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