「安心しろって。いずれは使うっての」
「……お前のいずれは信用できん。今、使え」
両兵が目を見開いている間にも、メルJは布団を敷き、そしてシーツをピンと張らせて地面の上でパンパンと掛布団を叩く。
「……いや、今ってそりゃあお前。もったいねぇだろ」
「もったいないと言う理由だけで買ったものを使われない側の気分にもなれ。ほら、ここだ」
メルJは布団に入るなり、隣を叩く。
両兵は不承気にしながらも自分がてこでも動かないと悟ったのか、布団に入っていた。
「……何か落ち着かねぇ。橋の下でいい布団で寝るってのは妙な気分だな」
「それを言うなら、元々橋の下で寝ていることのほうが妙だろうに」
二人して枕を並べ、仰向けになって橋げたを眺める。そう言えば、寝具店の店員はやたらと自分たちが夫婦と言う前提で話を進めていたな、とメルJはこんな状況で思い出してしまっていた。
いやでも鼓動が高鳴る。考えてみれば、真っ昼間の橋の下で、両兵と同じ布団を共有しているのだ。ドキドキするなと言うほうがおかしい。
「その……小河原。この布団はどうだ……?」
「うん? 悪くねぇンじゃねぇの? さすがは高い布団だな。カナイマで使っていたのよりかは随分とマシだ」
「そ、そうか……」
言葉が出てこない。気まずいと言うよりかは、自分から布団で寝るように誘導しておいて、今さら恥ずかしいと言うのは厚顔無恥な気さえしてくる。
「……寝具店では、ずっと私たちが夫婦と言う体で進んでいたな……」
「うん? まぁ、そういう風に見えたんだろうな。さすがに……ふわぁ……。真っ当な布団で寝ると眠気が来るもんだな」
両兵はリラックスしているようであったが、メルJはそれと対比して頭が冴えてしまっている。まるで眠れる気がしないまま、世間話を続けていた。
「そのだな……。やたらと旦那様、旦那様と……。日本人はみんなそうなのか? 無節操と言うか、何と言うか……。お前が旦那様なら、その……私は……!」
そこまで口にしたところで両兵が寝息を立てていることに気づく。
どうやら寝られないと言いながらも、布団に入ってしまえば早いようで両兵は完全に寝入っていた。
その無防備な横顔を眺めつつ、メルJは頬っぺたをつついて微笑む。
中天に昇った太陽は正午を刻み、おやすみを言うのには早いが、今日ばっかりは。
「……何でもない。おやすみ、小河原……いや、旦那様……なんてな」