勝世は資料の中に非武装の《アサルト・ハシャ》が写り込んでいるのを視界に留める。カラカス決戦において払い下げられた軍部の正規品であるのは見ただけで看破できていた。
「……血続操主は彼らにとっても重要な戦力のはず。恐らくは施設のセキュリティは最重要レベルだと思われるわ。そんな中で十数名は居るであろう血続を救うのは難しいでしょう。今回はあくまでも潜入調査。表立った動きをせずに情報だけを抜き出してちょうだい」
勝世はエルニィが偽装した自分の経歴書を目の当たりにする。嘘八百で塗り固められた経歴であったが、それくらいはしなければ潜入調査など困難を極めるのだろう。
「……オレは職務に私情は挟みません。もちろん、自分が少年兵だったとか、そういうのは特に。けれどですよ。ここに血続操主が居るって言うんなら……一人くれぇは……」
「勝世君、間違えないで。私たちにできるのは潜入への片道切符だけ。……さすがに誰かを助け出して、それで傷を癒せるような保証はないのよ」
トーキョーアンヘルまでその誰かを救えるような余力もない。資料を読み込んだ限りでは、むしろ最後まで作戦が露呈せずに終わるかどうかも怪しいのだ。
「……分かりました。これ、どうせ友次さんからの直通なんでしょう? 人機も出せねぇってなれば、個人の地力が物を言います。オレに繋いだ理由くらいは察しますよ」
「……ごめんなさいね。少し……辛いことを思い出させるかもしれないわ」
「別にいいっすよ。……もう何年も前の話です。オレも一端の諜報員として、少しは使えるってことを見せつけないとですからね」
緑茶を呷ってから、勝世は資料片手に立ち上がる。南は少しだけ申し訳なさそうに目線を伏せていた。
「……助かるわ。勝世君、情報は多分、遮断されている。一応の備えは、と言う意味で友次さんも《ナナツーウェイ》で現着してくれているはずよ。ただし、施設の目が及ぶ範囲での援護はできないでしょうけれど……」
要は極秘任務の上に援護は期待できない孤独の策だと言うわけか。だが、如何に平時はお互いにバックアップし合っているとは言え、勝世自身こう言った作戦が回って来たことは少なくはない。
「……大丈夫っすよ。心配しないでください。オレは帰ってきますんで。大船に乗ったつもりで、どーんと待っていてくださいよ!」
最後の言葉尻を引き上げて微笑んだのは自分なりの処世術もあったのかもしれない。南はそっと微笑んでから、一つ頷く。
「……じゃあ、頼んだわね。そういや、両はまた屋根の上に居ると思うけれど……会っていく?」
一拍だけ迷いを挟んでから勝世は首を横に振る。
「……いや、やめときます。野郎同士で作戦前に顔合わせるなんざ、オレらしくないっしょ。まぁ、それに。心配させたってしょーがないこともあるっつーことです」
上着を肩に担ぎ、勝世は歩み出していた。