JINKI 316-2 二人の少年

「……ですね。軽率でした」

 顕にはまるで自分自身のこだわりなどないかのようであった。自身の過失は素直に認め、その上で他人を貶めることもない。

 それだけの人格が備わっているのに、どうして少年兵などになったのだろう――そんな思考回路になった時点で、自分も平和ボケをしたものだと自嘲する。

 状況を選べないから、そういう境遇になったのにそれをどうして、などと尋ねるのはどうかしている。

「……ショーセさん?」

 不意に黙りこくったものだから顕は戸惑うように首を傾げる。顔立ちだけならば少しだけ幼いが、彼も日本で戦う赤緒たちと同世代のはずだ。細くしなやかなシルエットは人機の操縦桿などを掴むようにはできてないようにさえ映る。

「……なぁ、君らは……。カラカス陥落から先、さんざん大人の都合に振り回されてきたんだろ? 嫌になったりはしないのか? もしも……もしもの話でさ。人機なんかを扱わないでいいって言うんなら、そのほうが……」

 そこで言葉を区切る。そのほうが、何だと言うのだ。そのほうが健全だとでも言いたいのか。彼らに選択肢などないと言うのに。自分はいやしくも一時の感情と自分勝手な都合で身を固めて、彼らの領域を侮辱しようとしているのではないか。

 唇を引き結んでいると、顕は微笑む。

「……ショーセさんは優しいんですね。でもおれたちには、人機を扱わないなんてことは、そうだな。息をするだとか、眠たくなったら眠るくらいには当たり前で……。おれは、そういう夢見がちなところはないんです。もう受け入れているって言うか。ここで訓練を受けて、立派な操主に成れればと思っているんですから」

「……だが、人機操主ってのはいばら道だぞ? そんなの……」

「血続として見出された以上は、有用性……って言うのかな。おれなんかよりもサイラスのほうが向上心もあって違いますよ。あいつ、口は悪いですけれど一個のことに向かう精神には見習う部分があると思うんです」

「……すごいな」

「何がです? サイラスのことなら明日の訓練でも見たほうが」

「いや。そういう風に……他人のことをちゃんと見ていられるって言うのはさ。特別な才能なんかよりもよっぽど……卓越したものが要るってのは知っているからな」

 かつて広世と共に《トウジャCX》でベネズエラの大地を駆け抜け、お互いを鼓舞し合った。それは腐っていくだけの精神では決して辿り着けなかった境地だ。

「……おれは不真面目だと思いますよ。明日はサイラスの話を聞いてやってください。あいつ、何だかんだで喋りたがっていると思いますよ、ショーセさんとは」

「……そうか? オレはてっきり嫌われたと思っていたよ。会うなりニッポン人だなんて言われるなんてな」

 頬を掻いていると顕は柔らかく微笑む。

「口が悪いだけで……サイラスは立派ですよ。おれなんかよりも、ずっと」

「……送っていくよ。ここまで来るのも大変だっただろう」

 車椅子を押して勝世は図書室を立ち去る。顕の手には真っ赤な果実が握られており、しゃり、と彼は頬張って満足そうにしていた。

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