レイカル73 10月 レイカルと秋の心得

 その模様を眺めていると覚えず口元が緩んでしまう。

「……作木君。私ね、やっぱり時間を有意義に使いたいの。そりゃー、私らだって大学生身分でなに今さらドッジボールなんてしているんだって話だけれどさ。せっかくこれだけの縁を紡いだんだもの。なら、何もしないよりかはいいでしょ?」

 小夜が立ち上がって大きく伸びをする。

 そうか、と作木は差し込む夕陽を視野に入れる。

「……これもオリハルコンの縁なんですよね。僕たちの手に入れた……」

「そうよ。だから誇っていいんだってば。いつだって、私たちの傍にはレイカルたちが居るんだから」

 左足の捻挫で思った風に動けないだろうが、作木はベンチの隅に転がっていた野球ボールを掴んでいた。

「小夜さん。キャッチボールをしませんか? それならさほど痛みませんし」

「……いいけれど。作木君、ボールは投げられる?」

 立ち上がると確かに少しだけ痛むが、今はそれよりも――せっかく時間を取ってくれた人々に後悔させたくはなかった。

「大丈夫、です……。まぁ、それに。中途半端に秋を費やすのも、それは嫌なんでしょう?」

「……何だか見透かされちゃったみたいね。いいわ、作木君。ゆっくりね」

「おっとと……」

「……まずは投球フォームからねぇ」

 不格好に投げると余裕を持って小夜はキャッチする。これでは何だか物言いだけで格好がつかないなと思いつつ、作木は苦笑する。

「……お願いします。だって、季節は巡るんですから」

「短い秋を、楽しみましょうか」

 小夜の正確無比な送球を作木もキャッチする。

「さて! みんな揃ったことだし、ここに来るまでに買い揃えてきた食材も含めて今日はバーベキューにしましょうか! さぁ、ナナ子キッチンの開幕よ!」

 小夜が手を差し伸べる。

「行きましょうか。みんなが待っているわよ」

「……そうですね。みんなが待っていますので」

 小夜に手を引かれて作木は寄り集まる。

 少し涼しくなった季節には、人恋しい気分にもなる。せめて、その季節を取りこぼさないようにしながら――秋を全力で楽しんでいこう。

 割り切れない気持ちをせめて誰かに明け渡しつつ、夕映えの風を肺に取り込む。

「……いい季節に、なったんだなぁ」

 そう呟いて作木は足を向けていた。

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