レイカルはビンゴゲームに興じており、ぴょんぴょんと跳ねるので作木にしてみれば気が気ではない。
「……でも、何でみんな気になっていないんでしょう? 一般のお客さんも居るのに……」
「酔っ払うと妖精さんが見えるって言うでしょ? それなのよ、きっと」
不確かなナナ子の言葉に、はぁと生返事を返しながら作木が代わりにプレゼントを取りに行く。
手渡してくるのがちょうど小夜であったので、どぎまぎしながら赤い袋を受け取っていた。
「お、お待ちどうさまでーす……。こ、こちらぁ……36番の品になっておりまーす……」
顔は辛うじて笑っているが目は全く笑っていない。あとが怖いなと思いつつ、席までプレゼントを抱えて持って行く間際、肩に手を置かれる。
「お、お客さまぁー? ……ナナ子にはあとで覚えてろって言いなさいよね」
ぼそりと本音で呟かれ作木は足早に席へと戻っていく。するともう宴会の場は仕上がっているようで、ナナ子も豪快に飲み干す。
「な、ナナ子さん……っ! 小夜さん、あれ、限界ですよ!」
「うぅーん? なにぃー? 全然聞こえにゃーい♪」
「乾さん、ピッチ速いな」
対面で削里が何でもないようにジョッキに口を付けている。作木も促されたが、ここで酔うのはまずそうだと断っておいた。
「創主様っ! 開けていいですか?」
うずうずとするレイカルに作木は報復が怖いと思いつつ一応は頷く。
「う、うん……静かにね?」
「では……おおっ! これは……! 創主様、やっぱりあれは本物のサンタなんですね! 私の欲しい物ピッタリです!」
「うん……? レイカルの欲しいもの……?」
自分にも明かされていなかったそんなプレゼントを的確に突くことなど出来るのだろうか、と思っているとレイカルは高級品の手袋を差し出す。
「これ……! 眠るのにちょうどいいですし、使わない時には創主様の手に付けてあげられます! 本当にピッタリです!」
「あ、これ……お高い手袋とかの詰め合わせかぁ……。レイカルはサンタさんに何を頼んだのか、ここだけの話、教えてもらってもいいかな?」
「創主様と私、どっちもがあったかくなれる品でした! すごいです! あのサンタ……なるほど、やり手ですね!」
どうやらレイカルにはまだ完全に小夜であることは露呈していないらしい。ナナ子がジョッキを片手にこちらへとウインクする。
「ね? 来てよかったでしょ?」
「……まぁ、確かに。ちょっと意外でしたけれど……小夜さんのお仕事も見れましたしね」
あとが怖いのはナナ子のほうなのだが、彼女はそれを忘れたいのかあるいは最初から度外視しているのか新たなジョッキに口を付ける。
「よかったじゃないか。……レイカルの欲しいもの、悩んでいたんだろ?」
削里には何でもお見通しのようで作木は微笑みかける。
「……ですね。僕だけじゃ大変だったかもですけれど……。みんなが居れば」
きっと、来年も乗り越えられる――そう信じて作木はソフトドリンクを口に運ぶ。
今は、レイカルの笑顔があればきっと充分なはずだと信じて。
「――た、大変な目に遭ったぁー……。って、ナナ子。何で苦しそうな顔してるのよ」
「飲み過ぎたのよ……。あー、二日酔いぃ……」
自分を他所に好き勝手した報いだと思っていたが、小夜はそんな心地を抱えたまま、今日も勉強に勤しむレイカルたちへと視線を振り向ける。
つい先ほどからレイカルの羨望の眼差しが背中に突き刺さって痛いほどだ。
「……ねぇ、レイカル? あれはそのぉー……作木君から聞いたかもだけれど、別の姿で……」
「割佐美雷! すごいな、お前は! まさかトリガーイエローだけではなく、サンタクロースまでやっているなんて! なぁ! どうやってサンタになれたんだ? 私はすごく気になるぞ!」
「うっ……純粋な眼差しが辛い……。作木君ってば誤解を解かなかったのね……」
「そのほうがいいって判断でしょうよ。けれど、よかったじゃない、小夜。レイカルに憧れられてさ」
状況を楽しんでいるのは目に見えているが、今はナナ子の手のひらの上で転がされるのもよしとしよう。
「……まぁ、こうして……色々ありつつも、年って暮れていくのよねぇ」
本物のクリスマスイブが差し迫ってくる年の瀬。
今年ばかりは――少しだけの感慨も噛み締めて来年を待つとしよう。何せ、自分はトリガーイエローで、そして結果論とは言えサンタクロースにまでなってしまったのだから。
憧れと夢だけは壊さないようにするのが、こうして誰かの夢と希望と平和のために戦う、麗しくも強い一人の戦士の務めなのだ。