「……とは言っても、凧くらいの大きさしかないぜ?」
凧糸もないので浮かばせることもできそうにない。加えて質感は金属そのものなので、風になびかせることも難しそうである。
「ちょっと待ってね……。ほら、これ。小型の血塊を近づけさせてやると……」
古屋谷が血塊の欠片をゆっくりと近づけさせると、凧状の浮遊システムがゆっくりと浮遊し始める。
「おわっ……! はぁー、すごいな、こりゃ」
「血塊との距離次第でくるくる回して投擲武器にすることもできそうだね。実用化は難しいかもしれないけれど、南米戦線でキョムが使っていた自律兵装に近いものにできるんじゃないかな。もちろん、血続であることとアルファーは込みだろうけれど」
ひゅんひゅんと古屋谷の手の上で浮かんだり沈んだりする試作品は広世の目にしてみても珍しく、その自由自在さに感嘆する。
「よく造ったもんだよなぁ……。これがリバウンドビットとかの技術に転用されるのか……」
「こっちにも面白そうなものはありますよ」
グレンが手にしたのは懐中電灯のような代物であった。
「……これ……どう見てもただの懐中電灯なんじゃ……」
「ところが、です。ほら」
照らし出すと古屋谷の手の中にある血塊が一際強く輝く。思わず古屋谷が血塊を取り落としていた。
「びっくりした! ……これ、血塊の反応装置か……」
「レーダーとかに転用されている技術ですね。熱源探知で捉えられない人機だとかを、これで炙り出せると言うわけです」
紹介したグレンも少しだけ鼻高々なような気がするのは、やはり同じ整備班が造り上げたものであるということも大きいのだろう。
「次から次に試作品が詰め込まれているわけか。……この倉庫を探るだけでも三日三晩は要りそうだなぁ」
「けれど、親方も急に言い出すんだもんなぁ。“アンヘルの財政がまずいから六番倉庫から使えるものを見繕って来い!”なんて……」
広世には何となく意図は読めていた。ここ数日間、キョムの侵攻と米国の諜報機関は少しだけ物静かだ。その間に戦力の増強を図りたいのだろう。
カナイマアンヘルの敷地内でも六番倉庫と言えば、滅多に手をつけることがないと言う点で言えば有名である。
「パーツとかも、予備は五番倉庫までに留まってるんだよな? 六番倉庫を見るのは初めてだけれど……」
「石傘さんの発明品が多いですね。かく言うモリビトの代名詞であるリバウンドシールドも開発したのは石傘さんですから」
「当時はあんなコストのかかるものをよくも《モリビト2号》に付けやがって! って、親方と取っ組み合いの喧嘩にもなったんだよねぇ」
「へぇー……人に歴史あり、か」
今やモリビトタイプと言えば代名詞となっているリバウンドシールドも石傘が開発しなければ採用されなかった可能性もあるとは意外であった。
「おっ、これも。南さんたちの《ナナツーウェイカスタム》に装備されていたパワーショベルだね」
六番倉庫の奥に仕舞われているパワーショベルはそこいらかしこに傷が付けられており、南が操縦していたと言う《ナナツーウェイカスタム》の戦歴の苛烈さを物語っている。
「南さんも……日本で元気してるんですかね」
グレンのぼやいたその感想に広世はそう思うのも無理からぬことだとパワーショベルに手をつく。
「……それもこれも、地球の反対側か。まぁトーキョーアンヘルの情勢は断片的にしか入って来ないからな。けれど、俺たちだって上手くやってるんだ。便りがないのは良い便りだと思っておこうよ」
「……ですね。パワーショベルは《ナナツーウェイカスタム》のメイン武装だったので……キョムとの戦線で改修措置が施されたので、ヘブンズ時代の装備品はここに集められてるんですよ」
「えっと、これが回収品を収めておくコンテナだったかな。南さんは器用だったし、ルイちゃんも人機操縦で言えばかなりのレベルだったから、よく盾代わりに使って……整備班泣かせの備品だったなぁ」
古屋谷もその思い出に浸っているのだろう。両腕を組んでじぃんと涙を滲ませている。思えば、自分が来てからのアンヘルよりもそれまでのほうがよっぽど思い出深いのだ。一個一個の装備に感傷があるのはよく分かる。
「……ん? 何だこれ。トレーラーかな?」
ほろが被せられた備品に手を触れ、広世は後ろのグレンと協力してそれを取り払う。
「……これは……懐かしいものが出てきましたね」
「見たところ……ジープかな。でも、この感じ……ただの牽引車にしては複雑な機構だけれど……」
そこいらかしこを触れて確かめていると、不意に入口のほうから声をかけられる。
「広世! フィリプスさんが呼んでたよ! ……って、あれ? この子……」
「青葉か? ……悪い、ちょっと山野さんに頼まれちゃって倉庫を漁っていたところなんだけれど……この牽引車、知ってるのか?」
青葉はどこか感慨を噛み締めるように一つ頷いてから、そっか、と呟く
「こんなところに居たんだ……。広世、この子、人機だよ」
青葉の評に広世は困惑する。
「これ……人機なのか? 確かに牽引車にしては複雑な作りしてるなぁとは思ったけれど……」
「ほら、ここのところ。ちゃんと血塊炉があるところを叩いてあげると分かるでしょ?」
言われた通りに装甲の上から動力炉に相当する場所を叩くと、こぉーんと反響音が響き渡る。
「……本当だ。これ、血塊炉特有の反響音……って、青葉。じゃあこれに乗ったことも?」
「私は知っているだけかな。確か、名前は……」
「《タッコウ1号機》、だよね。懐かしいなぁ、こんなところに収容されてたんだ?」
古屋谷がこんこんとその装甲を叩く。広世の眼にはとても人機とは思えない大きさであり、その全長ではダウンサイジング化した小型血塊炉が関の山だ。
「……なぁ、グレンさん。こんなので、対抗策になったの? 人機だとしても、小さ過ぎだし、装甲も薄い。古代人機のシューターを喰らったら一発だって」
「いやぁ、仰る通りで……あれは大変だったなぁ……」
どうやら人に歴史あり、人機にも物語があるらしい。広世は一旦作業の手を休めて、物語の中枢である《タッコウ1号機》へと視線を振り向ける。
「……なんか、話すと長くなりそうだけれど、せっかくだからなぁ。俺も気になる。これ、どういう経緯で造られたんだ?」
「うん。それはね――」
「――今日もお疲れ様です!」
青葉が《モリビト2号》の操主訓練を終えたその時には、そう言えばいつものメンバーが居ないな、と思って整備班に声をかける。
「あの……川本さんたちは……?」
「あー、川本さん? 確か、昼下がりに買い出しに行ったって言ったっきりだったけれど……」
「あの! 今日のモリビトの操主訓練、すごく上手くいったと思うんです! ……何でかな……」
「今日は小河原さんも居ないからじゃない?」
ハッとして、失言であったと青葉は平謝りする。
「す、すいません……! 私、生意気なこと言って……!」
「いいって。……それにしても、川本さんたち遅いなー。ちょうど三人で連れ立って行ったんですよ? グレンさんと古屋谷さんと一緒に」
思えばいつものメンバーがごっそり居ないのだ。
川本を代表としたメカニックのメンバーと、それに両兵。何だか、悪い考えが鎌首をもたげてきたので、青葉は早々にタオルを受け取って汗を拭う。
「……うーん、両兵も買い出しについてっちゃったのかな……?」
「買い出しはいつも遅くなるのが通例ですし、きっと道草でも食ってるんじゃないですか?」
「ですかねぇ……。それにしても、変なの。両兵が居ないほうが……《モリビト2号》の性能を引き出せたなんて思うのは……ちょっと嫌だなぁ」
《モリビト2号》を下操主だけで動かせるとは思わないことだと何度も口酸っぱく言ってくる両兵が居ない分、少しだけリラックスして臨めたのかもしれない。しかし、人機は上操主と下操主の息が合ってこそ。これでは自分の実力の半分も出せていないのだろう。
シャワーでも浴びようと宿舎の廊下を折れたところでばったりと遭遇したのはルイで、彼女は珍しく書物に視線を落としていたせいであわやぶつかるところであった。
「わっ……! ルイ……?」
「あら、青葉じゃない。……なに? 妙なものでも見つけたような顔をしているわね」
「そ、それは……! あのね、ルイ。両兵がどこにも居ないの。どこ行っちゃったのかな?」
「……小河原さんが……? 知んないわよ。何で私が知ってると思ってるの?」
つんと澄ました様子のルイは相変わらず取り付く島もない。青葉はむぅとむくれてルイへと追及する。
「……ルイは心配じゃないの?」
「小河原さんもちゃらんぽらんなようでプライベートがあるんでしょ。何だってあんたが心配するのよ」
「だ、だって……操主訓練に来なかったんだよ? それって変だもん……」
両兵の性格を考えれば、他はすっぽかしても操主訓練を抜けるなんてことはないと思えたのだ。それはルイも同意見のようで、エメラルドグリーンの瞳に迷いを浮かべ首を傾げる。
「……小河原さんが操主訓練に来ない? 部屋に居るとか?」
「よ、呼びに行こうよ。……私だけだと、何て言われるか分かんないし……」
「……呆れた。青葉、小河原さんに言い返されるのが嫌なのね」
「……誰だって嫌じゃない? 両兵って、自分が一番正しいとか思ってそうなんだもん。私だって嫌だよ……」
「じゃあ二人で行きましょうか。もしかすると、思わぬ弱みを掴め……こほん。収穫があるかもしれないし」
「……ルイってば弱みって言った? ……もう。シャワー浴びたいのになぁ……」
両兵の部屋の前に訪れると、二人して譲り合ってしまう。
「……ルイが開けてよ」
「嫌よ。青葉が開けなさいよ」
「……何で嫌がってるの?」
「嫌がってるとかじゃないわ。女のほうから男の部屋のドアノブを握るなんて……“ふらち”よ」
「……不埒、ね」
意味が分かって言っているのだろうか、と思いながら青葉はノックする。返事がないのでドアノブを回すとどうやら鍵は開けっ放しのようで嘆息を漏らしていた。
「……両兵ー。開けっ放しなんて不用心だよ」
開ければ一端の文句が飛んでくるかと思っていたが、両兵の部屋は抜け殻であった。ベッドが部屋の端に据えられており、そこいらかしこに雑誌が散乱している。壁にはアメリカで流行しているロックスターのポスターが窓から差し込む斜陽で日焼けしていた。
「……わっ! ……男の人の読む雑誌ばっかり……」
「エロ本、ね」
あえて直接的な言い方を避けたのに、ルイのせいで台無しである。青葉はそれらを触らないように努めていたがルイは何でもないように引っ掴む。
「……わっ! よく触れるね……ルイ……」
「こんなの、大したことないわよ。青葉のほうこそ、わざと曲解したような物言いをして……むっつりなのはあんたのほうでしょ」
「わ、私はむっつりじゃないもん! ……こういうの……男の人は読むんだもんね……」
雑誌とティッシュが散乱しており、嫌でもそういう性的なことを想起せざるを得ない。
「……ホコリっぽいし、何だか妙なにおいがするわね。……窓を開けましょう」
「……えー……私がやるの?」
「他に誰がやるのよ。私は嫌よ。……小河原さんのベッドのほうまで行くなんて……“ふしだら”じゃない」
「……意味分かってるのかなぁ……もう」
そう言えばルイの日本語の授業は現太も難航していたことを思い返す。英語は完璧なのだが、日本語においてはさすがにルイの学習レベルでは毎回の手作りの小テストでギリギリであった。
青葉はと言うと、アンヘルに来てから英語を聞く機会が増えたお陰か、リスニングならば自信はあったが英文法となるとまだ心許ない。
自分は英語が、ルイは国語が共に苦手で教え合うこともあったが、互いに弱点を補填するために日々勉強に励むばかりであった。どっちがどっちを先んじても文句が出そうなもので、ちらと盗み見るとルイが手元で読みふけっていたのは日本文学の文庫本である。
「……ねぇ、青葉。トンネルって何? “国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。”とのことだけれど……雪国って何よ」
「えーっ……トンネルは……トンネルとしか言いようがないし、雪は見たことがないの?」
「何となくのイメージは掴めているけれど、雪の国って何なの? 日本語ってこういう造語が多いから困るのよね」
「うーん、積雪が多い土地とかかなぁ……。私も生まれも育ちも東京だから、積もるくらいなら見たことはあるけれど、雪国には行ったことないかも……」
「……ちっ。使えないわね」
舌打ちを漏らすルイに、青葉は項垂れながらようやく窓を開けることに成功する。どうやら両兵は滅多なことでは窓を開けない生活をしているようで、少しだけ油が固着している。
「手袋しておいてよかったぁ……。これも洗わないと」
「ねぇ、待って。これ、何なのかしら?」
窓を開けたお陰でベッドの下に転がっていた機械が夕陽に照らされて浮かび上がる。そこから少しずつ、声音が漏れているのを察知して青葉は持ち上げていた。
「……これ、軍用無線じゃない? 何だって両兵の部屋に――」
『おっ、繋がったか? おい! これ聞いてる奴! 誰だっていい! 聞いてっか!』
唐突に劈いた大声に青葉は耳がキーンとなるのを感じながらそれを離す。
「うるさ……っ! って、あれ? この声って……もしかして両兵?」
『青葉か? ……って、この無線、オレの部屋の受信機に合わせているはずだよな? 何だってオレの部屋に入ってンだよ』
「そ、それは……。って、両兵? 本当に両兵なの? 何で操主訓練来なかったの?」
『今はそんな場合じゃねーんだよ! ……他に誰か居るのか?』
「ルイが居るけれど……」
『よっし! 儲けたぜ! お前ら、これからポイント信号を送るから、すぐに助けに来い! 何なら黄坂のナナツーでいい! とっとと来ねぇと……』
そこから先の通信がザザッ、と砂嵐に遮られる。
『り、両兵! すぐに増援を呼んで! 今は……一刻も早く!』
「川本さん? 何で両兵と一緒に……!」
『り、両兵……! 早くしてー!』
『こりゃあ、まずいことになりましたよ……』
古屋谷とグレンの悲鳴のような声も連鎖し、青葉は事の重大さを察知していた。
「古屋谷さん? グレンさんまで……? 買い出しに行ったんじゃないですか……!」
『買い出しには行ったンだがよ……どうにも……まずい事態に首を突っ込んじまったらしい……! とっととナナツー呼び寄せろ! じゃねぇと、オレら全員……!』
ぷつっ、と通信が途絶える。
「両兵! 両兵ってば! 川本さん! 古屋谷さんにグレンさんも! どうしたんです!」
呼びかけても返事はない。
青葉はさぁと血の気が引いていくのを感じながら、ルイと視線を合わせる。
「……どうやら本気でまずそうね。南に言ってみるわ。《ナナツーウェイカスタム》をスクランブルで」
「うん、お願い……! ……もう、両兵ってば……一体何が……どうなっちゃってるの……!」
「――……ん? なぁーにやってンだ、てめぇらは」
「あ、両兵。ちょうどいいや。これから先、ちょっと買い出しに行くんだけれど、調整に時間がかかっちゃってね。手伝ってくれる?」
川本とグレン、それに古屋谷らが搭乗しているのはガラクタと余った部品で造られた丸まった亀を思わせる小型戦車であった。両兵はこつんとその装甲を叩く。
「それはいいんだが……何だってジープじゃなく、こんなボロくせぇ廃材に乗ってくんだよ」
「ボロくさいとは、とんだ言い草だなぁ。親方が余った廃材とか使って好きに造っていいって言ってくれたから、僕らで組み上げた……これでも人機なんだよ?」
「これが人機だぁ? ……とんだオンボロじゃねぇか」
「でもこれ、血塊炉積んでるんですよ。人機の定義に則るのなら、立派な人機ですって」
グレンの説明に両兵は胡乱そうにして機体の上に乗り込んで中枢部を叩く。すると、血塊炉搭載機特有の共鳴音が響き渡ってくる。
「……ホントだな、血塊炉の共鳴音と同じ音がしやがるぜ。ってか、こんなもんに貴重な血塊炉を使っていいのかよ。山野のジジィや石傘のジジィが口酸っぱく言ってンだろうが。血塊炉不足だとか何だとか」
「けれど、これ、その当の石傘さんの提案なんだよね。ほら、血塊炉の柔軟な利用策って言う。あの人、あれで《モリビト2号》のリバウンドシールドの設計者だし」
そう言えば、《モリビト2号》のメイン兵装を考案するのは石傘の管轄であったか、と両兵は今さら思い返して頬を掻く。
「ってもよ、過ぎたる代物っつうか、移動用の乗り物に血塊炉を搭載するのは何つーんだ? あれだ、豚にダイヤモンドっつーか」
「真珠ね……。けれど、そうでもないよ? いずれは血塊炉の独占はアンヘルだけに留まらないだろうし、今のガソリンだとかディーゼルエンジンと同じように一般に降りる時もあるのかもしれない。今のところ、そのモデルケースって感じかな」
「血塊炉が一般にだぁ? ……ラ・グラン・サバナでも入手制限があるっつーのに、それを一般人が手にする時があるのかよ」
「その入手制限だって、元々この場所を切り拓いていた原住民は気にも留めなかったんだし、案外、応用はいくらでも利くのかもねぇ。って、両兵。何で乗ってるのさ」
「決まってンだろ。……オレもついでに乗せてけよ。どうせお前らだけで買い出しっつっても要らん贅沢品とか買うんだろ? その辺の抜け目なさは分かってンだからよ」
その言葉には古屋谷もグレンも返答できないのか、唇をへの字に曲げる。川本もささやかな楽しみであったのか、愛想笑いを浮かべる。
「……参ったなぁ。僕らはこれでも、買い出しの責任の所在を求められているって言うか……ほら! クリーンなんだからさ!」
「ケッ。てめぇらがクリーンだなんて誰が信じるよ。大体、試運転も兼ねてるんだろ? なら、操主が居たほうが安心だろうが」
「……基本的な運転方法はジープやトラックと同じだから、僕らだけでも運用できるってものなんだけれどなぁ……」
「よく言うぜ、デブ。てめぇら、これから先、このエセ人機使って夜毎に麓まで降りていくんじゃねぇだろうな? こちとら、一か月に数回の支給で我慢してンだ。それくらい噛ませろよ」
自分がてこでも動かないと判断したのか、川本は肩を落とす。
「……仕方ない。両兵の意見を飲もう」
「自分たちだけでも運用可能な乗り物を造ったのは……まぁ、これでも手慰み的な意味もあったんですがね……了解です」
グレンがキーを回すと機体後部に装着されていた排気口からごぶっ、と黒煙が噴き上がる。
「……何だこれ、くっせぇ……」
「血塊炉の調整のためにディーゼルエンジンとの混合にしているからねぇ。半分はトラクターとかと同じ機構で動いているんだ」
「……やっすい農機具みてぇな駆動音だなぁ、オイ」
とは言え、さすがにカナイマアンヘルの整備班が造っただけはあって、乗り込んだ感覚は悪くはない。少し振動が強いが、軍部からの払い下げのトラックと似たようなものだ。
「……なぁ、ヒンシ。もっと速度出ねぇのかよ」
「これでも三十キロ前後は最大では出るんだけれど……今日は様子見かな」
「……ケチくせぇ原付みてぇな速度だな。これじゃ、人機とは呼べねぇンじゃねぇの?」
後部座席に乗り合わせた両兵は荒廃したジャングルを行く機体の追従性能を見ていた。普段用いる《モリビト2号》や《ナナツーウェイ》に比べれば推力はその十分の一あればいいほうだが、荒れ地を行くのには充分な馬力を持つ。
ちょうど重機と軽車両の間のような立ち位置の人機だな、と胸中に結ぶ。
「そうだ! 両兵、せっかくだし、この子の名前を付けてやってよ。まだ整備班の間じゃ名無しなんだ。せっかく生まれたんだし、名前は必要だろう?」
「オレがぁ? ……ネーミングセンスねぇからヒンシたちが付けろよ」
「でもさ、急造品とは言え人機なんだ。両兵が付けるのがちょうどいいんじゃないかな。ほら。これでも一応、操主だし」
「一応とは何だ、一応とは! ……ったく、あれだろ? 手足がねぇ亀みたいな人機なんだから……タートル……亀甲……《タッコウ1号機》……だとかか?」
「タッコウ? 何だかエテ公だとか、ハチ公だとかみたいな名前だなぁ」
「うっせぇぞ、デブ! オレのネーミングセンスに文句があンなら、自分で付けやがれ!」
思いっ切り助手席の底を蹴ってやると、それだけでこの機体が傾いでしまうので大慌てで川本が諌める。
「わわ……っ! 気を付けてよ、両兵! この機体にはバランサーが付いてないんだから!」
「姿勢制御装置なしの人機だぁ? ……とんだ違法建築にもほどがあンだろ……」
「バランサーを付けると大型化しちゃうんですよ……。小型化を目指すとどうしてもバランサーの類は取らなくっちゃいけなくって……。川本さんのアイデアでは、ほぼ正方形なので巡航モードに設定すればちゃんと動くって計算でしたよね?」
「あ、うん……。けれど巡航モードに設定する必要性はないかな……。だって、こいつで戦うことなんてあり得ないし……。それに、一応は対物センサーやら何やらを付けてはあるけれど、正直過剰装備かも。まぁ、ジャングルを行くから、野生動物だとかへの牽制用だけれどね」
「……なんか、そういうことを言い出すとフラグじゃねぇけれど、色々とありそうだな。ってか、ヒンシよぉ。今日は交易に向かうんだろ? 何だか道を逸れているように感じるが……」
「あれ? ああ、ちょっと待ってて。この機体、ジャイロコンパスが内蔵されてないから、方向を間違っちゃったかも」
「ったく、しっかりしてくれよ。……何でもかんでも減らしゃいいってもんじゃねぇぞ。ちょっと貸せって」
両兵がグレンと入れ替わって操縦席に乗り込み、操縦補正を行う。
「どうかな? これでもまぁまぁ踏破性はあると思うんだけれど……」
「足の裏にキャタピラが付いているみたいだな。軍の履帯だとかを再利用したのか。まぁ、ちょっとした戦車くらいの性能はあらぁな。んで、血塊炉の共鳴性能を利用して……っと。これで少しは見れるもんになったか?」
平常時の汎用モードに再設定し直し、両兵は機体の動きを馴染ませようとしたところで、不意にポイント警報が劈く。
「これ……古代人機のポイント警報……?」
「……おいおい、ここンポイントは古代人機が出ねぇはずだろうが。だってのに……ヒンシ、デブにグレン。ちょっと慎重になっとけ」
「り、両兵……?」
しーっ、と唇の前で指を立てた両兵は《タッコウ1号機》の履帯を用いてゆっくりと進む。ポイント警報を鳴り響かせた鉄塔が近づくにつれ、沼地が視界に入ってくる。
湿地帯のポイントであるこの場所は古代人機の警戒範囲の外であったはずだが、沼に浮かび上がっている鋼鉄の破片を両兵は認めていた。
「……ヒンシ、巡航モードってのはどうやればいい」
「ハンドルの下の操縦桿を三回連続で引けば可変するけれど……一回きりだよ? まさか、両兵……」
「……ちょっとまずいかもしれん。デブ、棒っ切れがあったろ? それ貸せ」
「ど、どうぞ……」
両兵は一旦操縦席から離れ、鉄の棒を手に沼に浮かんでいる鉄片をつつく。
「大丈夫なんですか……? それ……」
「なぁに、古代人機にしちゃ小さい。……だが、これは……」
棒で拾い上げたのは薄く伸びた装甲であった。泥に塗れているが、その装甲に刻印された独特の模様は疑いようもない。
「……これ、古代人機の脱皮の痕跡か……?」
「脱皮? そんなの、これまでの交戦データには……」
「データにゃねぇ個体なんだろうさ。となると……ヤベェ……ッ!」
咄嗟に両兵は《タッコウ1号機》へと飛びかかる。操縦桿を握り締め、撤退しかけてズン、と重い音が残響する。
安易に振り返っては駄目だ、と思いながらも早鐘を打つ鼓動は習い性の感覚を帯びさせて、両兵は振り返りざまに機体を横っ飛びさせる。
普段の《モリビト2号》に比べれば機体推力などないも同然であったが、それでも回避自体は上手くいったらしい。
今しがたの動きがなければ確実に粉砕されていたであろう、先刻まで機体があった空間を古代人機の触手が掻っ切る。
「……これ……古代人機……!」
「三人とも! 舌ぁ噛まねぇように気ぃつけろ! 来るぞ!」
巡航モードへと可変を遂げた《タッコウ1号機》であるが、履帯の順応性を捨て、四足で立脚しサブアームを保持しているだけでほとんど生身と変わらない。
比して、眼前に現れた古代人機は中型クラスの大きさであったが、間違いなく脅威だ。両兵は素早く照準器を覗き込み、古代人機へと右腕サブアームに付属されている機銃を向ける。
「こいつでも喰らいやがれ!」
機銃掃射が走るが、所詮は野生動物や対人ライフルレベル。古代人機の装甲を叩くのは不可能であった。
銃火器を撃ち込まれたのだと認識し、古代人機が触手を伸ばす。
古屋谷とグレンが息を呑んだのが伝わったが、両兵は構っていられない。触手の動きを見極め、瞬時に機体を駆け抜けさせて懐へと潜り込もうとする。
「ヒンシ! 格闘兵装!」
「左腕に試作プレスナイフ一丁が……!」
「……上、等ッ!」
左腕サブアームの下部から引き出された試作プレスナイフが古代人機の装甲へと届き、瞬間的に灼熱を帯びた一閃が舞う。
だが、古代人機の表皮だけを掠めただけだ。
「ちぃ……っ! この程度じゃ墜ちてくれねぇよなァ……ッ!」
手ごたえはあった。だが如何せん、火力不足なのだ。両兵は本能的な状況判断で《タッコウ1号機》の四足を走らせ、古代人機の背面へと向かう。
機銃を撃ち込みながら後退した瞬間、ふっ、と重力が掻き消えていた。
「……まさか」
視界に大写しになったのは突然湧いた窪地である。普段の人機操縦ならばさして問題ではない深さであったが、《タッコウ1号機》の機動力では立て直しが不可能だ。
古代人機の触手が大地を跳ね、足場を失った《タッコウ1号機》を射抜かんと迫る。
「……野ッ郎……!」
左腕の試作プレスナイフに力場を入れようとして、その刃から鋭さが消え去る。
「ごめん、両兵! プレスナイフはせいぜい、一回電気を入れるのが精いっぱい……!」
「それを早く言いやがれよ……ッ!」
だが、ここまで《モリビト2号》で戦い抜いた経験則は伊達や酔狂ではない。空中で姿勢を整え、両兵は丹田に力を込めていた。
「メカニック三人! 対ショック姿勢だ!」
「とっくに対ショック!」
その言葉が響き渡るのと、窪地の中心である泉に落っこちたのはほぼ同時。
両兵は降り注ぐ水柱の滴をフロントガラスに受けながら、眩暈を覚えつつ古代人機を視野に入れる。
古代人機は追撃の必要性がないと感じたのか、それ以上の深追いはせず退いていく。
「……今すぐにくびり殺される可能性は薄そうだが……っと。てめぇら、生きてっか……?」
「い、生きてる……! 手も足もくっついてる……!」
信じられない心地で後部座席から川本とグレンが這い出してくる。助手席の古屋谷へと両兵はその頬をはたく。
「おい、デブ! ……駄目だ、こいつのびてやがる。まぁ、不幸中の幸いって奴か。窪地が湿地帯で助かったな。これで堅い地面なら全員お陀仏ってところだったが……」
泉の源泉となっており、踏み締めた地面は随分と柔い。お陰で衝撃が減殺され、《タッコウ1号機》の自重をやわらげていた。
「……両兵。どうするのさ。古屋谷は……このままにしておいたほうがよさそうだね。下手にパニックになられると辛いし……」
「だなぁ。……なぁ、ヒンシ。無線付いてるよな? さすがにそこまでオミットしたなんてないだろ?」
「……まぁ、あるけれど。けれど送信強度は低いよ?」
「よし。幸いにして近くにポイントの鉄塔があるってことは、受信範囲内のはずだ。オレの部屋の受信機と、格納庫に置かれている無線機にもかけてみる。誰がキャッチしてくれるか分からんからな」
両兵は無線機のつまみを回しながら、その周波数を合わせる。
「な、慣れてるんですね、二人とも……。我々は古代人機の縄張りに入ったんですよ……?」
グレンがうろたえている。この中では最も筋肉質である彼が取り乱すとは珍しいと感じていると、川本が肩を竦める。
「……まぁねぇ。僕は一応、操主候補として何回か現太さんに習ったこともあるし、こういうケースも想定済みだったけれど……グレンは全然?」
「……自分は反射神経では人機の操主適性がありませんでしたので……」
グレンはその場に蹲って膝を抱えて震え出す。
そう言えば、メカニックが直で古代人機と遭遇するのは恐らくは初めてのはずだ。両兵は、そういうものか、と思い直す。
「……珍しいこともあるもんだ。筋肉バカのグレンがビビり散らかすなんてよ。あーあ! レコーダーでもありゃ撮って永劫笑い者にしてぇところだが……こいつ、全然装備品はねぇな?」
「そりゃあそうだって。今日はあくまで慣らし運転だし……。元々戦闘用の人機じゃないんだから」
「……川本さんも落ち着いてらっしゃるんですね。両兵がそうなのは当たり前ですが……」
「……取り乱したって体力を消費するだけだし、僕はね。いくつかサバイバル術にも心得があるけれど」
「水は……飲めねぇってほど汚れちゃいねぇが最終手段だな。腹ぁ壊したら元も子もねぇ」
泉の水を手元でさらいながら、両兵はここから脱出する術を講じる。仰ぎ見るが、まだ古代人機のテリトリーなのは違いないらしく、時折その姿が垣間見える。
「……どうするのさ。このまま餓死なんてとんでもないよ」
「分かってンよ。……何とかして、無線が繋がれば……」
しかし、無線機が繋がる可能性は絶望的だ。両兵は一度頭を冷やそうと、《タッコウ1号機》から出て、泉の水を浴びる。
「ふぃー……三日ぶりの水浴びがこうなっちまうとは思いも寄らねぇな」
「……風呂は開けてあるんだから可能な限り毎日入りなよ……。まぁ、僕も人のこと言えないけれど」
泉の水をすくって顔を洗った川本は嘆息をつく。
「……どうするんです? 古代人機は動きそうにありませんよ……」
「何だよ、グレン。てめぇ、筋肉あるクセにビビりなんだな。もうちょいどっしりと構えろよ」
「む……むむむ無理ですよ……! 古代人機は……そりゃあ怖いですから……」
顔面蒼白のグレンに、そういえば詳しい事情は聞いたことがなかったな、と思い返す。
「……なぁ、こいつ。何かあったのか?」
「詮索なんてよくないよ。……まぁ、似たようなもんだって。住処を追われたんだ。古代人機に。その後は軍部を転々……結果的に実行力を持っていたルエパからの出向でカナイマに来て、ってところかな」
「ほぉーん。どうりでビビり散らかしてるわけだぜ。ルエパって言えば、だいぶ向こうから来たんだな。そっちでもメカニックか? それとも、現地兵かよ」
「あっ……ルエパには……一応、同期が居まして……。女子ですけれどね」
「何だ、彼女持ちかよ。ったく、こんな土壇場だってのに色気の話なんてするんじゃねぇっての」
「……聞いたのは両兵のほうだろ? 一回だけ見たことあるな。確かシール・ハラレィさんだっけ?」
「あ、はい……古屋谷さんともそこで一瞬だけ一緒だったんでカナイマに来た当初はほぼ同じで……」
「ケッ。何だ、デブに女の影かぁ? こいつ、一生そういうの知らずに生きてくんだと見下してたのによ」
当の本人は助手席で相変わらず失神しているので、両兵はせめて脱出時に邪魔にならないようにシートベルトを厳重に絞めておく。本音で言えば古屋谷の女っ気など生意気だと締め上げたいところだが、今は事態が事態なので少し強めにシートベルトを付けてやるくらいに留めておこう。
「グレンは、確か元々は兵役志望だったんだけれど、手先が器用だから古屋谷と一緒にメカニックに引き取ったんだよ。今でも筋トレは日課だもんね?」
「あ、はい……。筋トレだけは続けておこうと……って、これ、何なんでしょうね……。古代人機に追い込まれて絶体絶命のピンチなのに……身の上話なんて……」
「アホか。絶体絶命だからこそだろ。……死んでからじゃ身の上話もできんからな」
吊り下がっているツタは人間ならば取っ掛かりにできそうだが、問題なのは人機でそれは不可能であることだろう。両兵がツタの強度を何度か引っ張って確かめているとグレンが出し抜けに尋ねる。
「……怖くないんですか。だって、いつもの《モリビト2号》じゃないんですよ……」
「怖いって言えばどうこうなンのかよ。戦える準備はしとけ。筋トレしてんだろ? そうだ、それなら……もしかしてやれるか……?」
両兵が何度かグレンとツタを互い違いに見てから、よしと策を巡らせる。
「グレン。てめぇは囮ンなれ」
「は……?」
信じられない心地で聞き返したグレンに両兵は皆まで言うなと制する。
「人機じゃ重量オーバーで上まで上がれねぇが、人一人ならどうこうならぁ。……てめぇは古代人機を引き付けろ。元々、兵役も考えてたんなら、対人戦闘くらいは考慮のうちにあンだろ」
「いや、その……本気ですか! 古代人機相手に、生身で飛び出すなんて……!」
「生身たぁ言わん。《タッコウ1号機》の小銃を持ってけ。それで古代人機の注意を向けて欲しいってだけの簡単な話だ」
「いや、それ……!」
当惑するグレンに比してその話を傍で聞いていた川本は冷静に顎に手を添える。
「……両兵。考えはあるんだよね?」
「当たり前だろ。……心配すんな。死ねと言ってるわけじゃねぇよ」
「ほとんど死ねって言うのと変わらないと思うんですが……。あの、川本さん。どうしても両兵の作戦じゃないと駄目そうですか……」
「こればっかりは実戦経験のある操主のほうが冴えてると、僕は思う。……秘策は最後まで伏せておくべきだしね」
グレンがこちらへと視線を振るので両兵はひらひらと手を振る。
「大丈夫たぁ言い切れんが、これが唯一の生命線だ。頼んだぜ、グレン。男見せろ!」
その言葉に宿った信頼感を察したのか、グレンは唾を飲み下す。恐らくは覚悟なんてできているはずもないのだが、両兵の案に乗ることを決めた様子だ。
「……分かりました。それで? 考えと言うのは?」
「ツタを使って上までまず、てめぇが上がる。古代人機の攻撃を上手くかわしてオレらの射程に誘い込め。無茶しろとは言わねぇよ。だが、可能な限り古代人機を怒らせておけ。そうするとやりやすくなる」
グレンは息を呑んだが、それでもこの絶望的な局面を覆すのには必要な覚悟だ。
「……分かりました。けれど、小銃を持って行っていいんですか? メイン武装なんじゃ……」
「心配すんな。そこから先はオレが上手くやる」
どうにも信用し切っていない面持ちであったが、それでも今は信を置くしかないと判断したのだろう。グレンは深呼吸して、垂れ下がっているツタへと手を伸ばす。
「……こんなことに……筋肉を使うつもりはないのに……」
そうは言いつつも順調で、グレンはあっという間に登り切っていた。
「よし。これで作戦の第一段階はクリア。あとは……古代人機をこっちに引き付けろ! それが脱出の秘策その一だ!」
「どうなっても知りませんよ……!」
グレンが小銃を古代人機に向けて放った途端、両兵と川本は《タッコウ1号機》に乗り込んでスターターを起こす。
「……ほぇ……? 一体何が……」
「今さら気ぃついたか、デブ。こっから無茶するから、頼むから悲鳴上げたりだとかしてくれねぇでくれよな」
返答を待つ前に両兵はグレンが引き付けた古代人機を照準に据えていた。しかし、遠距離武装である小銃はグレンの手だ。今、《タッコウ1号機》にあるのはギリギリの出力を誇る試作プレスナイフだけ。
「……ヒンシ。一回分くらいの推力はあるよな?」
「本当にジャンプ用だけれどね……。それでどうにかなる?」
「――充分だ」
古代人機が窪地を覗き込む。トドメを刺し損ねたことを察知したのか、無数の触手が空間を奔り、次の瞬間、《タッコウ1号機》を射抜いていた。
通常ならば装甲を貫かれてしまえば戦闘続行不可能でも不思議なない。しかし、両兵はサブアームの右腕を絡ませていた。
「もっと当てて来いよ! ヘタクソ! 直撃来い!」
その言葉が通じたのかどうかは不明だが、古代人機の触手がさらに《タッコウ1号機》を貫いていく。両兵はその瞬間、ジャンプ用の推進剤を最大値に設定して跳躍していた。
「狙ったのは……ツタじゃなく、古代人機……てめぇ自身のご自慢の触手だ。これを足掛かりにすりゃ……てめぇに届く……!」
ただし、一度でも血塊炉付近をやられてしまえば使えない博打であったが、今回は賭けに勝ったのは自分たちのほうだ。
両兵は浮かび上がった機体で試作プレスナイフに荷電させる。
《タッコウ1号機》のエネルギーはほとんど枯渇状態であったが、それでも最後の一滴を搾り出すかのように刃が明滅し、古代人機の装甲を一閃していた。
隣の助手席でようやく起きた古屋谷が過呼吸状態で周囲を見渡している。