JINKI 242 ささやかな思い出を綴って

 カポン、と音が遠く長く、残響する。 そう言えば、この時間帯に風呂に入るのは初めてであったか、と感傷が掠めたのも一瞬、隣で湯船に浸かるルイはこきりと肩を鳴らす。「酷い目に遭ったわね。……あんたのせいで」「わ、私のせいです […]

レイカル51 11月 レイカルといい日旅立ち

「寒っ。すっかり冷え込んできたわねぇ……」  駅のホームに出るなり、小夜はそうぼやいていた。  今日は少し遠くのロケ場所に行くのに、珍しく電車移動で、小夜はコートを羽織っていた。

JINKI 241 漕ぎ出すガッツを

「あっ、青葉さん。現太さんにこの書類を渡してもらえるかな? 軍部から送られてきたんだけれど、できるだけ早急に見て欲しいって」 《モリビト2号》から降りたところで、川本から頼まれたおつかいに、青葉は承諾する。 「はい。えっ […]

JINKI 240 相応しい場所で

 いつになく緊迫した様子で、居間に通された赤緒は南たちの顔色を窺っていた。「……お、お茶が入りましたよー……って」 南はどこか似つかわしくない赤縁の眼鏡をつけて、書類を整理している。 その鬼のような速さと的確さに目を奪わ […]

JINKI 239 届けたい明日のために

 空高くを鳥が羽ばたいている――と、益体のない意識に取られた一瞬後には乗り合わせた船が大きく揺れたのを感じ取っていた。 「……それにしても、こういった形で海を渡ることになるとは思いも寄りませんでした」  そう告げる相手へ […]

JINKI 238 さつきとクマのぬいぐるみ

「まったくもう……立花さんも片づけないんだから……」  居間のそこいらに散らかっているエルニィの発明品を慎重に片づけていると、ふと目に留まったのは――。 「うん? クマ……さん、のぬいぐるみだ、これ……」

レイカル50 10月 小夜と秋風の季節に

「あれ? ナナ子、何してるのよ。これまで作ったレイカルたち用の服を集めたりして……」  ナナ子がキャリーケースいっぱいに服を並べ上げているのを目にして、小夜は疑問符を浮かべる。 「まぁ、なんて言うの? ちょうど気温とかも […]

JINKI 235 頼れる友に

 いつだって引き金を絞る際には、緊張が付き纏うものだ。  さつきは照準器の向こう側に佇むシミュレーターの仮想敵を見据え、何度か銃撃する。 「……一つ、二つ……」  自分でもリズムというものは取れて来たような気がするが、命 […]