JINKI 74 思い出が醒めないうちに

 キャッキャッと歩き回る群衆をじっと睨み据え、両兵は嘆息を漏らしていた。 「ねぇ、両兵。何でそんなに機嫌悪いのさ」 「何でも何も……そもそもどうして、てめぇなんかと」  周囲には女子供や、家族連れが目立つ中で、自分とエル […]

JINKI 73 勇気は花に、想いは胸に

「ん? 何してんだ? さつき」  はぅわっ! と肩を震わせたさつきは、こちらを見るなり何だと安堵する。 「お兄ちゃんかぁ……。五郎さんかと思っちゃった」 「何でオレだとまずいんだよ。それ、何だ? 紙をくしゃくしゃにしてっ […]

レイカル 17 五月「レイカルと鯉のぼり」

「そ、創主様……。どうやら始まったようですね……」  どこか意味ありげに口にしたレイカルに作木は足を止める。 「……何がだい?」 「何がって……戦ですよ。あれは……間違いなく、開戦の狼煙に違いありません……」  身構えた […]

JINKI 72 金色の黄昏に

「おっ、小河原さん。今日も一杯どうだい?」  河川敷で野良暮らしをしている仲間に声をかけられ、両兵はソファに寝転びながら手を振る。 「おーっ、楽しみにしてっわ。じゃあ今日は腹減らしとくか。……ちょうど柊も来ねぇし、街ぶら […]

JINKI 71 想い、桜の下で

「……なぁーんか、呑気だよな、連中」  ぼやいた両兵に隣に座った南が首を傾げる。 「そう? 日本人ってみんなこんなもんよ?」 「……分かんねぇのは、何でオレが、朝の五時からこんな場所でわざわざ張らなきゃならんのか、という […]

JINKI 70 ヘルタワーを追え!

 ――なぁ、聞いたことあるか、と船員が問い質していた。  何てことはない、世間話の一つ。漁船ではしかし、そういう「噂」が絶えない。海の上に火の玉を見ただの、海坊主に行き会っただのという、取りとめのない話。誰かの退屈を紛ら […]

JINKI 69 匿名者より

 部屋中に巻き散らかされたケーブルに、赤緒は辟易していた。 「……もうっ。立花さん。散らかしっ放しじゃないですか……」 「あー、それ? 今必要だから置いといて。データ取るのにこっちの電源だけじゃ不足していてさー。もうちょ […]

JINKI 68 アンヘルと歯医者

 ふと、目に留まった姿に赤緒は立ち止まっていた。 「あれ……ルイさん……」  どうしてなのだか、ルイは境内の奥に縮こまり、その顔を伏せていた。  まさかどこか悪いのだろうか。歩み寄った赤緒に、ルイがびくりと肩を震わせる。 […]

JINKI 67 君と前に進みたい

 ――両手をまず、真っ直ぐに伸ばして。 力まないで、ペダルを踏んだ足はぶれさせず、重心を真ん中に捉える――。  ハンドルを掴んだ手が震える。掌が汗ばんでいるのが分かる。  緊張しているのか、と己に問いかけても、やはりと言 […]

JINKI 66 今ここにあるもの

「あー、赤緒さん。いいところに居てくれたわね」  不意に呼び止められて赤緒が面食らっていると、南はそそくさとその手を引く。 「今ヒマ? ヒマよね? だったら、ちょっとだけ来てくれる?」 「えっ……あっ、ちょっと! 南さん […]