JINKI 65 雨空を抜けて

 叩きつけるようなスコールに、立ち尽くした影があった。  白銀の髪より滴る水滴を払い、駆け抜けてきたルイは、服の裾を絞る。染みついた水の重さが素直に今の自分の引きずる悔恨の重さであった。  禊の雨にもならないのは、南米の […]

JINKI 64 春が来るから

『えっさー、ほいさー、っと! あれ? これでいいんだっけ?』  エルニィの疑問を引き受けた《ブロッケントウジャ》が巨大なくわを振るい上げて自問する。その様子に、さつきは愛機である《ナナツーライト》越しに応じていた。 「え […]

レイカル 16 三月「レイカルと卒業式」

「むむっ……創主様。何だか妙です……」  フードの奥で声にしたレイカルに作木は振り返る。 「妙って……?」 「おかしいんです。今日だけで何人も……まさか、あれは新種の武器なのでは?」  作木は慌てて戦闘姿勢に入ろうとする […]

JINKI 63 私のマンガ道

 等間隔にペンを走らせる音が響く中で、赤緒は息を詰めていた。  眼前にあるのは真っ白な漫画用紙。そこへと指定された背景を描き加えようとして、あっとその指がインクをこぼしてしまう。 「ご、ゴメンね、マキちゃん……。すぐに拭 […]

レイカル 15 二月「レイカルとうるう年」

「……創主様。今日私は……とんでもないことを知ったかもしれません……」  青ざめたレイカルに枕もとでそう言われてしまえば、如何に微睡みの途上であっても自分は起きざるを得なかった。  震えたレイカルは本当に、この世で最も恐 […]

JINKI 62 メカニックの誇り

『トウジャってのはさ、もっとこう……アクロバティックに動かないと。こんな両腕、ナンセンスが過ぎるよ』  そうぼやきながら軍部の改修が入った《トウジャCX》を、まるで意のままに操るエルニィに誰もが毒気を抜かれた様子であった […]

JINKI 61 真紅の鎧姫

『――認証クリア。これより、新型人機、《クイン・COシャ》の実地試験を開始します。操主は八将陣、八城ジュリ』  いくつかのシステム音声に導かれ、ジュリは操縦桿を握り締めていた。  予め聞いていた通り、真紅の痩躯である人機 […]

JINKI 60 ビタースイートデイズ

「小河原さんにだけは、ぜーったいにあげませんからっ!」  言い捨てられ、両兵は硬直する。  それを好奇の眼差しで見送ったのはエルニィと南であった。 「あーあ、両ってばフラれちゃってー」 「……うっせぇよ、黄坂。それもこれ […]

JINKI 59 戦士の背中

 ――何もない。  何も感じられない、茫漠とした闇。  彼方まで見られた景色には地平線を染める赤が焼き付いている。  終わりのない戦場と戦地の怨嗟。誰かのために声を上げることも、何かのために声を荒らげることも諦められた死 […]

JINKI 58 南米式友情の証2

「お茶うけを持ってきましたよー……って、あれ? 皆さん、どこへ?」  首を巡らせたさつきは、軒先で巨大な筐体をいじっているエルニィを発見していた。 「あの、立花さん。皆さんは……」 「あー、なんか自衛隊の視察だってさー。 […]