JINKI 41 遠雷の日には

 遠雷が漏れ聞こえて、赤緒はやおら台所から遠ざかっていた。それを見た五郎が嘆息をつく。 「あの……五郎さん」 「はい。後はさつきさんに手伝っていただきますので」  赤緒は面持ちを暗くして台所を後にする。それを怪訝そうにさ […]

JINKI 40 恋ぞつもりて

 砂礫を踏み締める感覚は作業用の《ナナツーウェイ》ならではで、下操主に付き物のストレスも高い。それでも、下操主席から一度として弱音を吐かないルイは素直に称賛できる、と南は差し入れのホットドックを頬張りながら考えていた。 […]

JINKI 39 「蘇る翼」

「どうです? これが我が国家が威信にかけて開発した、人機の第一号機です」  その言葉と共に照明が照り返され、水色の兵器をその場に集った者たちに見せつけた。  表向きは、各国政府への品評会だ。この時、拍手喝采が起きたのを、 […]

JINKI 38 守り人の価値

「あー、そうじゃねぇ。もっと寄せるんだよ。ナナツーなんて姿勢制御楽なほうだろうが」  両兵の言葉に迷彩仕様の《ナナツーウェイ》がよろめき、またしても倒れる。前のめりに倒れたお陰で派手にすっ転げる事態は防げたが、それでも何 […]

レイカル 9 八月「夏の思い出」

 ビーチは戦場。  ――とばかりに、小夜は張り切っていたのだが、実際作木の軟弱体質にも困ったもので、早速パラソルを置いて、その陰で涼んでいる。  小さな携行扇風機を手にし、既にぐったりモードだ。 「おおっ! 砂浜の中に何 […]

JINKI 37 ライフイズビューティフル

 銃の握り方を知ったのは、五歳の頃だった。  他のおもちゃと同じように、まさかこれで人が死ぬなんて思いも寄らない。だが、父親はそれを与え、そして誇らしく笑ったのを、記憶の断片で覚えている。  実際に撃ってみると、反動で肩 […]

レイカル 8 七月「レイカルの夏休み」

 扇風機を回していると、レイカルが口を大きく開けて、あーと声にする。 「すごいです! 創主様! こいつの前に座って、あーって言うだけで、声が拡張します! 新種のアーマーハウルなのでは?」 「いや、あの……。そういうために […]

JINKI 36 雨宿りの間に

「あっ、降り出しちゃった……」  思わぬ悪天候に見舞われ、さつきは大慌てで洗濯物を取り込もうとする。今日はいやに静かだと訝しむと、そういえば五郎と赤緒は地鎮祭に赴いており、南とエルニィは新型人機の試験に出かけていることを […]

JINKI 35 絶対じゃない今

 子供の頃は、何かと万能感が勝っていた気がする。  何をやっても自由、何をされても自由。だから、特に気を利かせたつもりはなかったし、気にかけたこともなかった。  そういうものだ、と飲み込み始めたのは物心ついた時には既にだ […]