JINKI 80 いつか願いが咲く日まで

 はい、と白い封筒を差し出され、赤緒は当惑する。 「……何ですか? これ」 「初任給よ。赤緒さん、頑張ってくれているから」  南の口から出た言葉に赤緒はまごついてしまう。 「そんな……っ、受け取れませんよ……」

JINKI 79 歩くような速さで

 ふわぁ、と欠伸を噛み殺し、赤緒はパジャマ姿のまま、台所へと顔を出していた。  既に朝食の用意をしている五郎へと挨拶する。 「おはようございます……五郎さん」 「赤緒さん、おはようございます。今日も登校日ですよね?」 「 […]

JINKI 78 夏の匂いのする戦場で

《ナナツーライト》の痩躯に無数の循環ケーブルが繋がれた状態は、まるで装置に雁字搦めにされたかのようにさえも映る。  ケーブルの辿る先は機体の番えた長距離ライフルの砲身であった。 『《ナナツーライト》へ。撃鉄、起こせ』   […]

JINKI 77 アンヘルの御守り

 ふわぁ、と欠伸を噛み殺した南は懐中電灯の明かりで見渡していた。 「……格納庫の見回りってかったるい……。人が居ないと言えばそうだけれど……」  ひとまず格納庫に収まっている人機のチェックと、それから電気設備の点検。自衛 […]

JINKI 76 ルイとさつきの算数教室

「あっ、こら! ルイ! 逃げるなー!」 「や、よ。何でそんなこと、やらなきゃいけないの」  境内で追いかけっこをしているルイと南を目に留めたさつきは、茫然と眺めていた。 「……ルイさんと、南さん? 何やってるんだろう…… […]

JINKI 75 アンヘルと愛妻弁当

「あっ……小河原さーん! 何やってんだろ……野球?」  買い物の途中で河川敷から両兵の声が聞こえたので、呼びかけると少年たちが一斉に指差した。 「あっ、両兵! キレーなお姉さんが呼んでるよー!」 「あン? そんな知り合い […]

JINKI 74 思い出が醒めないうちに

 キャッキャッと歩き回る群衆をじっと睨み据え、両兵は嘆息を漏らしていた。 「ねぇ、両兵。何でそんなに機嫌悪いのさ」 「何でも何も……そもそもどうして、てめぇなんかと」  周囲には女子供や、家族連れが目立つ中で、自分とエル […]

JINKI 73 勇気は花に、想いは胸に

「ん? 何してんだ? さつき」  はぅわっ! と肩を震わせたさつきは、こちらを見るなり何だと安堵する。 「お兄ちゃんかぁ……。五郎さんかと思っちゃった」 「何でオレだとまずいんだよ。それ、何だ? 紙をくしゃくしゃにしてっ […]

JINKI 72 金色の黄昏に

「おっ、小河原さん。今日も一杯どうだい?」  河川敷で野良暮らしをしている仲間に声をかけられ、両兵はソファに寝転びながら手を振る。 「おーっ、楽しみにしてっわ。じゃあ今日は腹減らしとくか。……ちょうど柊も来ねぇし、街ぶら […]

JINKI 71 想い、桜の下で

「……なぁーんか、呑気だよな、連中」  ぼやいた両兵に隣に座った南が首を傾げる。 「そう? 日本人ってみんなこんなもんよ?」 「……分かんねぇのは、何でオレが、朝の五時からこんな場所でわざわざ張らなきゃならんのか、という […]