「小河原さんにだけは、ぜーったいにあげませんからっ!」 言い捨てられ、両兵は硬直する。 それを好奇の眼差しで見送ったのはエルニィと南であった。 「あーあ、両ってばフラれちゃってー」 「……うっせぇよ、黄坂。それもこれ […]
カテゴリーアーカイブ:JINKINobel/著 シチミ大使
JINKI 59 戦士の背中
――何もない。 何も感じられない、茫漠とした闇。 彼方まで見られた景色には地平線を染める赤が焼き付いている。 終わりのない戦場と戦地の怨嗟。誰かのために声を上げることも、何かのために声を荒らげることも諦められた死 […]
JINKI 58 南米式友情の証2
「お茶うけを持ってきましたよー……って、あれ? 皆さん、どこへ?」 首を巡らせたさつきは、軒先で巨大な筐体をいじっているエルニィを発見していた。 「あの、立花さん。皆さんは……」 「あー、なんか自衛隊の視察だってさー。 […]
JINKI 57 白鯨の討ち手
静謐に沈んだ湖畔は月明りを映し出している。 蒼く染まる夜、付近の木々より鳥の鳴き声が朗々と響く中で、半ば泥に塗れたジャングルの小道を亜熱帯仕様が施された《ナナツーウェイ》が歩んでいく。 乳白色の標準型だが、熱に強い […]
JINKI 56 アンヘルのお正月
いつものようにお茶うけを持って行くと、居間で着物の着付けをしているエルニィに遭遇してぎょっとする。 赤緒はおずおずと尋ねていた。 「ご、五郎さん……? 何を……」
JINKI 55 銀と黒
「――ヒトは、罪を被って生まれてきた、と我々は定義します」 教会に響き渡ったその声音にぼろを身に纏っていた信徒たちは、おおと声を上げていた。 どれもこれも、見渡せば些事なるもの。そう断じた金髪のシスターはその銀色の瞳 […]
JINKI 54 荒れ狂う運命を超えて
輸送されてきたコンテナに収まっている人機のデータに、エルニィは眉根を寄せる。 「……南米戦線からの払い下げかぁ……。あまりにごてごてしていて、ボクはあんまし好きじゃないんだけれど」 「この際、選り好みはしていられないわ […]
JINKI 53 あたたかな今を
こたつを挟んで二人が気まずそうに対峙していた。 一方はどこかばつが悪そうに。一方は、茶をすすって落ち着き払っているが本意ではないとでも言うように。 視線に耐えかねて青葉は口を開いていた。 「……あの、やっぱり怒って […]
JINKI 52 第百四十五次定例会議事録
『――これより、第百四十五次定例会を行う』 浮かび上がったのはそれぞれに動物の意匠を凝らしたマスクを持つ者たちだ。 互いの素性は割れていても、こうして道化を演じ続けるのは、表舞台での自己とここで発言するものは分けられ […]
JINKI 51 ティータイムの前に
むすっと頬をむくれさせたメルJの気迫に、赤緒は何も言えなくなっていた。 彼女には珍しく、居間に座り込み、徹底抗戦の構えである。 もっとも、それはメルJだけでなく、軒先で同じように目線を逸らしているルイも、なのである […]