ふと、帰ってくるなり部屋の電気が点かないのを、作木は訝しむ。 「あれ? 電気代、払い忘れたかな……?」 なら仕方がない、と歩を進めた、その時であった。 足元がワイヤーを引っかけ、よろめいたところにクッションが顔面に […]
カテゴリーアーカイブ:オリハルコン・レイカルnobel/著 シチミ大使
レイカル 10 九月「レイカルのお月見」
「あれ? レイカル……。どこに行ったんだろ?」 夕飯の準備を行っている間にレイカルは部屋から忽然と姿を消していた。視線を巡らせる作木にラクレスが指差す。 「ここです、ここ」 レイカルは毛布に包まっている。涼しくなって […]
レイカル 9 八月「夏の思い出」
ビーチは戦場。 ――とばかりに、小夜は張り切っていたのだが、実際作木の軟弱体質にも困ったもので、早速パラソルを置いて、その陰で涼んでいる。 小さな携行扇風機を手にし、既にぐったりモードだ。 「おおっ! 砂浜の中に何 […]
レイカル 8 七月「レイカルの夏休み」
扇風機を回していると、レイカルが口を大きく開けて、あーと声にする。 「すごいです! 創主様! こいつの前に座って、あーって言うだけで、声が拡張します! 新種のアーマーハウルなのでは?」 「いや、あの……。そういうために […]
レイカル 7 六月「レイカルのあめふり」
「……やみませんね……雨」 窓辺で降りしきる雨を眺めていたレイカルに、作木は意識を振り向けていた。じぃっと外を凝視するレイカルに、作木は応じる。 「梅雨だからねぇ」
レイカル 6 五月「レイカルと五月病」
「ヒヒイロ、大変なんだ! 創主様が!」 突然に駆け込んできたレイカルにヒヒイロは困惑する。元々、落ち着きのない性格ではあったが、息を切らして肩を荒立たせたその様子にヒヒイロは落ち着くように促す。 「待て待て。どうしたと […]
レイカル 5 エイプリルフール「レイカルの大きなウソ」
「レイカル。ねぇ、知ってる?」 「あっ! お前、そのパターンはまた私に大嘘を吹き込む奴だな! もう騙されないぞ!」 構えたレイカルがデザインナイフで威嚇する。それをラクレスは余裕ありげな笑みを浮かべて頭を振るのだった。 […]
レイカル 4 「好敵手(とも)の誓いを」
「ねぇ、ユーリ。持て余してるなー、とか思ってる?」 問いかけられてユーリは眼鏡のブリッジを上げた。芳しいコーヒーの香りが漂ってくる。故郷ほどではないが、日本のコーヒー文化も悪くはない。 薄暗闇の喫茶店では相棒であるオ […]
レイカル 3 「レイカルのひな祭り」
「創主様。なにやら視線を感じます……。敵の気配かも……」 パーカーのフード部分に隠れていたレイカルが不意にそのようなことを言い出したものだから、作木は困惑した。 覚えず周囲へと視線を配る。その眼差しに警戒が宿った。 […]
レイカル2 バレンタイン「乙女の戦場」
「乙女の戦場の季節がやってきたわよ、小夜」 スイーツバイキングで不意にそう切り込んできたナナ子に、小夜は訝しげな眼差しを注いだ後、額に触れた。 「……何?」 「いや、熱でもあるのかなー、って」 「小夜! 悔しくないの? […]