JINKI 114 奇跡と喧騒の一日

「うん! 今日のお味噌汁もとってもいい味!」 「あっ、さつきちゃん? ごめんね、ちょっと遅れちゃって……」  その声を聞いて台所へと欠伸を噛み殺しながら起きてきた赤緒は、味噌汁の仕込みを行う影に瞠目していた。 「ヴァ、ヴ […]

JINKI 113 恋のテレホンダイヤル

「おっ、赤緒、おかえりー」 「あっ、立花さん。ただいま帰りまし……何なんです? それ」 「これー? 本国から送られて来た新しい端末なんだよねー。何でもさ、十年以内にこれが流行るとか流行らないとか」  エルニィの手にしてい […]

JINKI 112 おいしい冬の日に

 夕食の席で自分の手にした料理に南がおっ、と声を上げる。 「赤緒さん、今日はドリアなのね」 「あ、はい。あったまるかと思って」 「……むっ、何なんだ、それは」  意外に難色を示したのはメルJである。あれ、と赤緒は小首を傾 […]

JINKI 111 大人になるということ

「あら、今日はお昼の用意がしてないのね」  ふと気づいた南に筐体を弄っているエルニィが応じる。 「あー、だって赤緒もさつきも今は自衛隊のほうに行っちゃって留守だし、五郎さんは……ああ、神事だっけ? メルJ……も居ないよね […]

JINKI 110 踏みしめる、この瞬間に

 ――微かに切れ切れになった記憶の中で、囃し立てる子供の声を聞く。  それは渦巻く断片の記憶に墨を垂らしたかのように広がり、やがて拡散し、そして霧散する。  一滴の記憶の片隅に過ぎないそれを辿ることは叶わず、何度か手繰り […]

JINKI 109 虚無の空に向けて

 黒い稲光が、中天でぱっと弾けた。  そう認識した時には、大地は荒れ果て、草木は枯れ、この世の彼方としか思えないような光景が出現する。  自分はその日も変わらず、食糧の調達に赴いていたのであるが、集落を襲ったその漆黒の波 […]

JINKI 108 アンヘルのパソコン教室

「えっと……あれ? 立花さん。英語しか打てなくなったんですけれど……」  画面を覗き込んで首を傾げる赤緒へとエルニィが歩み寄るなり、もうっと苛立つ。 「半角押したんでしょ。ほら、これで戻った。つまんないことで呼ばないでよ […]

JINKI 107 思い出が翳らぬように

 それぞれに携行する巨大なリュックサックを背負った後ろ姿に、赤緒はむぅと頬をむくれさせる。 「なぁーに、不機嫌やってんだ、柊」 「だって……急に言い出すんですもん、南さんも。今日は鯛料理だったのに……」 「時間がねぇんだ […]

JINKI 106 さよならを紡ぐ翼

「――囲まれちまったな」  そう忌々しく口にした両兵に対して、赤緒は上操主席で荒い呼吸をつく。  恐れを染み込ませたトレースシステムが何倍にも重く感じていた。その視界の中に広がるのは、一面の漆黒の人機たち。  名称、《ブ […]

JINKI 105 不器用な足並みで

 ――道理を見極めろ。  そう口にするのを、何回も聞いていた。飽き飽きするほどに。  だからか、次第にその言葉自体に何てこともない、恨みつらみが混じるようになってしまっていた。  ――道理なんて知ったことか。自分の道は自 […]