JINKI 216 凍てついた街より 教会で祈る相手には、まず挨拶が礼節とされる。 あるいは、沈黙による無言の肯定か。 その時にあったものは、しかし押し入った我が身への無礼さを恥じ入るような会釈であった。 ページ: 1 2 3
JINKI 214 思い出は春風に 「あれ? ルイさん、何をしていらっしゃるんですか?」 さつきが洗濯物を干しているすぐ傍で、どうしてなのだかルイはタンポポを引き千切っていた。 「さつき……? 何だって今なのよ……」 ページ: 1 2 3
レイカル45 5月 それぞれの母の日に 「これを選んでやると、さしもの奴とは言え、喜ぶのではないかのう」 「ふむふむ……参考になります」 道を歩いていると、不意に見知った声が聞こえてきて、小夜は振り返っていた。 ページ: 1 2 3
JINKI 213 アンヘルのチャット同盟 「えーっと、電話回線をこっちで繋いでーっと。柊神社の電話回線ってどうだっけ?」 「こっちよ、自称天才。確か赤緒がここに繋いでいたわ」 エルニィが電線をガイドしたところで、台所から菓子盆を持ってきたさつきが顔を合わせる。 ページ: 1 2 3
JINKI 212 二人の相性の距離 「おめでとー! 二人の相性はバッチリ!」 神事を終えて柊神社に帰るなり、境内でエルニィの声が弾けて赤緒は顔を出していた。 そこには大仰なハートマークを付けた筐体が設置されており、初々しい男女二人組がお互いを見つめ合って照れている。 ページ: 1 2 3
JINKI 211 出会いのヨスガに 『青葉、そっちに三機行った。こっちではフィリプス隊長と一緒に古代人機を押さえておくから、《バーゴイル》の迎撃を頼む』 通信網より耳朶を打った広世の声に、青葉はジャングルに潜ませた《モリビト雷号》より、砲身を突き上げていた。 ページ: 1 2 3
JINKI 210 楽しみは別腹で 「これこれー。やっぱりカレーは炊き立てに限るよねぇ」 「……こんな時間に?」 夜半に境内から声が聞こえて来たので、赤緒は胡乱そうにすっと顔を向ける。 ページ: 1 2 3
JINKI 209 ヒミツの関係 「さつき、今日の帰りは自称天才と一緒にザリガニ釣りに行くわよ」 久方ぶりに登校したルイにそう呼びかけられ、さつきは戸惑いを浮かべていた。 「えっと……何でザリガニ釣り……?」 ページ: 1 2 3
レイカル44 4月 削里と花見酒 「風流なもんだ。こうして、外で将棋を打つなんて」 「しかし、真次郎殿。少し、無理なのでは?」 「無理なんて言うもんじゃないさ、ヒヒイロ。それとも、お前の盤面に不満でもあるのか?」 ページ: 1 2 3