JINKI 85 灰色を行く者

「オーライ、オーライ……デッキアップ完了。そのまま初期動作に入ってください、立花さん」

『りょーかい。でもさー、アンヘルの陣営が足りないからって、これは反感買うんじゃないの?』

 屹立した人機は磔にされており、項垂れたその眼光からは灯火が失せている。

「いえ、有効な手段として、こっちはジャンクでも漁りたいくらいな気持ちなんです。それに、壊しただけと言うのもあまり、上には通用しないと言いますか」

『……友次さん。それって結局、敵でも味方でも、余裕ないってことじゃん』

JINKI 84 輝きを誇って

 ざざん、と白波が立って両兵は欠伸を噛み殺す。

「……釣れねぇな」

 ぼやいた視線の先には釣り糸が垂らされており、さらに視野を拡大すれば水平線の彼方まで望めた。

「そりゃ、しょーがないよ、両兵。ここ、釣り堀じゃないもん」

 隣で胡坐を掻くエルニィは自分と同じように釣り糸を垂らしている。ただし、自分と違うのは最新式のロッドを備えており、そこいらの釣具屋で適当に買い揃えた釣り竿ではないことだろう。

ウィンヴルガ 7 真白のとある1日 4

「真白さん、そのまま思いきり腰を降ろしなさいっ……!」

 快絶に涙を流す私の耳元で悪魔が囁く。私はその誘惑に頭の先から飛び込んだ。

「んぎぃいいいいいっっ!?」

 瞬間、本当に膣の端が裂け、私は大声を上げた。鉄串や極太のディルドに耐えて来た私の膣も2本刺しには耐えられなかった。

 ――だが、その悲鳴の中には快感の色が大いに含まれていた。痛みによって生まれた被虐的な激感が性器を襲い、私は軽い絶頂を迎えてしまった。

JINKI 83 ささやかな眠りにつく前に

「モリビトの駆動系はナナツーのものが流用されていて……で、代替部品をすぐには揃えられないから、関節部やブルブラッドの消費を少なくするために、されている工夫が……」

 そこまでマニュアルを読んだところで、ノックの音が耳朶を打つ。

「……こんな時間に?」

 青葉は枕元の時計を見やる。もう深夜二時だ。とっくにみんな寝入っている時間だろう。慎重に歩み寄ってドアを開けると、パジャマ姿のルイが枕を持ってじっとこちらを見据えていた。

 思わずひっ、と短く悲鳴を上げてしまう。

「ルイ……? どうしたの? 南さんは……」

ウィンヴルガ 6 真白のとある1日3

「――――い゛っっ!?」

 突如、私の意志とは無関係に、膣がディルドを思いきり締め付け始めた。

「な、何これっ!? 痛いっ!! 痛いいいいぃぃぃっっ!!!」

 棒を力の限り握り締めるように、膣がディルドをギチギチと締め上げる。突起がさらに柔肉へと食い込んで、凄まじい苦痛を生む。突然加わった秘部の痛みに、髪を振りたくって絶叫する。自分の身体に何が起きているのか全く分からない。唯々痛くて苦しい。

「ふふふふふっ! どうですか、真白さん。それは〝膣痙攣〟を意図的に引き起こすことができる薬剤なのですよ。身体のどこから注入してもすぐに効果を発揮します」

レイカル 18 7月7日 レイカルの七夕

「いーやっ! 絶対にこのほうがいいっ!」

 譲らないレイカルにカリクムは言いやる。

「私はこっちのほうがいいって言ってんだよ! なぁ、小夜ー、こいつどうにかしてくれよ!」

 二人をどこか余所目に小夜は嘆息をつく。

「……あんたらねぇ、顔つき合わせたら喧嘩ばっかり……どうにかしてほしいのはこっちよ」

 肩を竦めるとレイカルは飛びかかる。

 その先は笹であった。ぶらんと釣り下がり、ふふんと鼻を鳴らす。

「どうだ! これで私が先行を取ったぞ!」

「あっ、ずるいぞ、お前! 私だってーっ!」

JINKI 82 鮮やかに、澄み渡る

 訓練場の片隅で、駆け抜ける紫色に塗装されたトウジャを目に留めて、両兵は立ち止まる。

「……ありゃ、何だ? 訓練の中にゃ、自衛隊のための《アサルトハシャ》と、ナナツーの編成案しかなかったはずだが」

 紫色のトウジャはシャープな白いラインを施されており、高機動を実現するために、肘にも加速推進剤が備え付けられている。

 既存の《トウジャCX》の開発理念とも違う機体を凝視していると、唐突に声がかかった。

『よぉーし、そこまで! いい感じだよ、ルイ』

ウィンヴルガ 5 真白のとある1日 2

 朝食の後、私は〝調教〟を受けるためにドミネイト兵の研究施設のような場所へと連れ出される。エントランスに入る時も、廊下を歩く時も服は着させてもらえない。すれ違うドミネイト兵の男達がジロジロと欲望剥き出しの獣じみた視線を向けてくるけれど、後ろ手に手錠を掛けられているから隠したくても隠せない。

 首輪の背面から伸びる鎖が背中を通って股間に這わされ、その先を根室が握っている。鎖を引っ張られると、股間にきつく食い込む悪趣味なリードだった。

「ひひひ……いつ見てもとびきりの美人だな。目茶苦茶に犯してぇ」

JINKI 81 帰る場所があるなら

「あっ……立花さんってば、またゲームしてる……」

 洗濯物を取り込んだ赤緒はじっとテレビの前で居座っているエルニィを見咎めていた。別段、ゲームをするなと言っているわけではない。ただ、節度を守って欲しいと感じているだけだ。

「立花さん。ゲームばかりしていると、本業が疎かになっちゃいますよ」

 それとなく飛ばした注意にもエルニィは一顧だにしない。その態度に赤緒はむっとしてエルニィの背後へと歩み寄り、手にしているコントローラーを引っ手繰っていた。

ウィンヴルガ 4 真白のとある1日 1

 楽しかった日々の夢を見る。

 大切な妹とのかけ換えのない日々。皆が笑い合って毎日を過ごし、将来への不安なんて無かった。こんな日々がずっと続くのだと疑ったことも無かった。

 だけど……

「う、ん……」

 意識が優しい思い出から絶望的な現実へと引き上げられる。

 まず耳に飛び込んでくるのは鎖が擦れ合う耳障りな音――その音が夢見心地な私の意識に泥を塗りたくる。取り付けられた無機質で冷たい金属の首輪が今の身分を如実に表していた。

(いつの間にか気を失っていたのか……)