JINKI 22 キョムの幕間

「カリス。強化人間とは言え、砂糖を入れ過ぎです。身体を壊しますよ」  対面に座ったハマドの忠言にカリスは渋い顔を作った。 「……うっせぇな。オレの勝手だろうが」 「いざという時に病気で倒れられても困るんですよ、まったく… […]

JINKI 21 月に乾杯

「南。メルJのシュナイガー、まだ修復の目処が立たないの? いい加減、装甲の一つも直してあげないと血塊炉が駄目になっちゃうよ?」  エルニィの発した言葉に南は額に手をやっていた。 「うぅーん、金づるには話を通してあるんだけ […]

レイカル 5 エイプリルフール「レイカルの大きなウソ」

「レイカル。ねぇ、知ってる?」 「あっ! お前、そのパターンはまた私に大嘘を吹き込む奴だな! もう騙されないぞ!」  構えたレイカルがデザインナイフで威嚇する。それをラクレスは余裕ありげな笑みを浮かべて頭を振るのだった。 […]

JINKI 20 彼女の戦い

「ねぇねぇ。赤緒、今日の晩御飯はどうするの?」  珍しく買い物に付き添ってきたエルニィへと赤緒は思案していた。 「そうですね……。魚の煮つけなんてどうでしょうか?」 「おっ、いいね。ボク、日本食は好きだよ。さつきと赤緒が […]

JINKI 19 アンヘルの勉強会

 戦車大隊の火線が咲き、中空を舞う黒カラスを縫い止めようとした。しかし敵機は翻弄するかのように自衛隊へとプレッシャーの光条を見舞う。 「て、撤退ーっ! 敵が来るぞ!」  指示が飛ぶ前に、一気に至近へと肉迫した《バーゴイル […]

レイカル 4 「好敵手(とも)の誓いを」

「ねぇ、ユーリ。持て余してるなー、とか思ってる?」  問いかけられてユーリは眼鏡のブリッジを上げた。芳しいコーヒーの香りが漂ってくる。故郷ほどではないが、日本のコーヒー文化も悪くはない。  薄暗闇の喫茶店では相棒であるオ […]

JINKI 18 明日はきっと

『阪神レオポンズの救世主! バルクス・ウォーゲイル選手! ホームラン記録更新です!』  レポーターの声が酒の席でも妙に残響する。  バルクスは、傾けたウイスキーのグラスに映り込んだテレビの極彩色のスポーツ番組を視野に入れ […]

レイカル 3 「レイカルのひな祭り」

「創主様。なにやら視線を感じます……。敵の気配かも……」  パーカーのフード部分に隠れていたレイカルが不意にそのようなことを言い出したものだから、作木は困惑した。  覚えず周囲へと視線を配る。その眼差しに警戒が宿った。 […]

JINKI 17 さつきの一日巫女体験

「うぅ……ごめんなさい……」  天井を睨んだ赤緒は盛大にくしゃみをする。五郎が体温計を手にしていた。 「38℃。風邪ですね」  嘆息をついた五郎は額に手をやる。 「どうしたものでしょうか。これから地鎮祭があるのですが…… […]

JINKI 16 その手に掴むもの

 離れていく。空だ。遥かなる青空。その距離を埋めようと手を伸ばして、同期した鋼鉄の腕が空を掻く。  あ、と一呼吸吐いた時には、断崖から突き落とされた機体は地上へと激突していた。背筋にかかる衝撃と激痛。脊髄が砕けたのかと思 […]