JINKI 7 ヘブンズは永遠に

「あのぅ……南さん」  軒先で米国の高官と交渉中であった南は、後ろから問いかけてきた赤緒の申しわけなさそうな声音に、連中との会話を打ち切った。 「うん? 何ー? ……うっさいわね。とにかく! 予算は三割増し! 以上!」 […]

JINKI 6 シークレットミッション

 慣らし運転で構わない、という言葉を受けてコックピットに収まったエルニィは眉をひそめた。 「あのさ、そもそも今回のミッションからして慣らし運転なんてレベルじゃないでしょ? 何せ、ボクの人機なんだから」  コンソールを撫で […]

JINKI 5 銀翼の系譜 前編

前編  燃え盛るのは絶海の地平。  エメラルドに染まっていたはずの海は、灼熱を湛え水平線を赤く煮え滾らせる。闇夜を淡く、それでいて後戻り出来ない光が景色を満たしていた。 「……壊れてしまった」  何もかも、全て。彼女の信 […]

JINKI 4 運命を待つ夕刻

「エル坊。シュートを決めた感触はどうじゃった?」  問いかけた祖父にエルニィはふんと鼻を鳴らす。 「……悪くないね」 「そうか」  斜陽がビル群を照らし出す。陽が落ちれば、いつものように日常は終わる。いつものように、とエ […]

JINKI 3 負けられない戦い

「黄坂南さんを食事に誘おうと思っております」  呼び出されたと思ったら、とルイは目に見えてげんなりする。  ダビングは高官机についたまま、真面目腐った面持ちを崩さない。 「僕は本気です」 「……勝手に誘えば」

JINKI 2 監視塔の男

「人機に魅入られたのさ。あいつは」  そうあだ名される男はいつも監視塔にいる。言われて興味を持ったのは、ベネズエラ軍部に配属されて三ヶ月が経とうとした頃であった。  新兵である自分には全てが新しく、慣れない事ばかりであっ […]

JINKI 1 交差する場所

「精が出るものだ」  資料を手繰ったジュリへとかけられた言葉に、彼女は面を上げる。  戦士の威容を漂わせた巨漢が、眼前に佇んでいた。丸テーブルを挟んで彼はじっとこちらを見つめる。まるでその意思を探るかのように。 「……仕 […]