「レイカル! 少しは自信持ちなさい。ウリカルはあんたの子供なんでしょ?」
小夜の激励を受けウリカルへと向き直ったレイカルは、魔女衣装を整えてやる。
「とっても似合っているぞ! ウリカルっ!」
「お母さん……お父さんも……その、いいんでしょうか……」
「もちろん。ウリカルだって、僕の大事なオリハルコンだ」
「お父さん……その、私……私もその、ハロウィンに憧れていて――!」
「おっと! そこまでよ、ウリカル。そこから先は、乙女同士の会話と行きましょう。あんたの衣装はとっくに用意してあるんだから! このナナ子様を嘗めないでよね!」
「気を付けなさいよー、ウリカル。ナナ子って目を瞑っていてもサイズが分かるみたいだからなー」
カリクムの言葉を受けつつ、ウリカルは溢れ出す喜びの涙を止められないようであった。
ラクレスがそっと肩を叩く。
「ハロウィンは誰だって輝ける季節。作木様、そうでしょう?」
「……ああ。ウリカルの衣装、楽しみにしてる」
奥へと引っ込んだ作木に、ウリカルはそっと微笑みを浮かべる。
「……私、レイカルさんたちが居なかったらきっと、こんな楽しいことを知らないままで……」
「でも、あなたは私たちの仲間で、作木様のオリハルコンでしょう? だったら、胸を張りなさい。ハロウィンの季節は誰だって着飾れるのよぉ」
背中を押す言葉を発してくれたラクレスに、ウリカルは大輪の笑顔で応じる。
「はいっ! まだまだ至らぬところの多い私ですけれど……よろしくお願いしますっ!」
「ウリカルは体育会系ねぇ。カリクム、あんたも見習えば? 素直なところとか」
「何で私が……。でもちょっとくらいは、それでもいいのかもね……」
カリクムと小夜の間の絆を感じつつ、レイカルはウリカルとラクレスの肩を抱いていた。
「じゃあみんなで――ハッピーハロウィンだ!」
「――それにしたって、僕はミイラ男ですか……」
「よく似合っているよ、作木君」
同じように街灯を練り歩く削里はフランケンシュタインの仮装を身に纏っている。
肩幅がある分、よく似合っていた。
「やっぱりもやしだって思われてるですかね……」
苦笑する自分と共に、レイカルたちが舞い踊る。
普段ならば身を隠すように言っているが、今宵はハロウィンナイト――迷い込んだのは魔性の夜だ。
だとすれば、この夜くらいは、彼女らの存在だって別段隠れ潜むものではないだろう。
「……今日はハロウィン。何が起こったって不思議じゃない夜、か」
サキュバスの格好をした小夜と妖精のコスに身を包んだナナ子が振り返る。
「何やってるのよー、作木君ってば。早く早くー!」
「さぁ、行きなよ。今夜ばっかりは、何が起こったって不思議じゃないんだから」
削里に背中を押され、作木は駆け出す。
――秋空の夜は、思ったよりも肌寒い。
だからこそ、こうして人と人の絆を確かめ合えるイベントがきっと、この夜を熱くする。
魔女衣装に身を包んだレイカルたちが跳ね上がる。
「ハッピーハロウィンです! 創主様!」