「あ、赤緒……? 何でこんな時間に?」
「それはこっちの台詞ですよ。……もしかして、またパソコンで悪さを……?」
「ご、誤解だなぁ! ちょっとマインスイーパで遊んでいただけなのに……」
「……ゲームですよね?」
「知的な娯楽だってば。……ねぇ、ルイ?」
「自称天才、怒られるのはあんただけよ」
すぐに撤退していくルイに対してエルニィは愕然とする。
「う、裏切ったなぁー!」
「立花さん! いいですか? ゲームは一日一時間!」
「……うぅ……赤緒に見つかっちゃうなんてツイてないなぁ……」
こちらの喧騒に目を覚ましたのか、さつきがそっと廊下の先から窺っていた。
「あの……こんな夜中にどうなされたんで?」
「あっ、聞いてよ、さつきちゃん! 立花さんってばまたゲーム!」
さつきは自分とエルニィを見比べた後に、そっとたしなめていた。
「まぁまぁ。パソコンも悪い文化じゃないですし、あまり目くじら立てて怒るのも……ねぇ、立花さん」
それが少し意外で赤緒が面食らっていると、エルニィが得意そうにさつきの肩を組む。
「悪いね、赤緒。ボクら同盟なんだ」
「ど、同盟……? 何の……?」
問い返した自分にエルニィは思案した後にさつきと目線を交わす。
「そうだなぁ……チャット同盟、って感じかな」
「お、お茶の同盟……?」
意味が分からずに首をひねっているとさつきも少し微笑む。
「ええ、そうですね。私たち、チャット同盟なんです」
何だかふざけているようには見えない赤緒は、二人の間に降り立った特別なものを感じていた。
「……うーん、まぁその……さつきちゃんが許すなら、いいかな……。何だか納得できないけれど」
「ホント? やった! ありがとー、さつき!」
「けれど! パソコンはたくさんお金がかかるって聞いたことがあります! いいですか? インターネットも一日――!」
「一時間、ですよね?」
先回りしてさつきに返されて赤緒が戸惑っていると、彼女は唇の前で指を立てていた。
「素敵な使い方も、あるんですよ? 赤緒さん」
何だか少し悪戯めいた笑顔はさつきらしくないようですらあったが、今は得意めいたその微笑みに――少しだけ許す気分になったのは間違いない。