JINKI 255-11 男の意地を貫く

「どうでしょうねぇ。私も、今回のグリムの眷属のやり方に関してで言えば、少し参っている部分もあります。首都の完全凍結に、都市機能の麻痺。どれを取っても、ただの諜報員が秘匿するのには難しい」

「これまでみてぇに、アンヘルの全面的な手柄……ってわけにもいきませんか」

「矢面に立つのは彼女らだったのは間違いないんですが、これではシナリオとしては早急が過ぎます。米国との渡りも完璧な形とは言い難い。何者かの作為が動いているのは明白でしょう」

「……それでも、立ち向かうしかねぇんでしょう? いいですよ、分かりやすくって」

 ベッドから起き上がり、勝世は《ビッグナナツー》の格納庫に一路向かっていた。

 友次の操縦する黒い《ナナツーウェイ》の隣には、見知った機体が搬入されている。

「……嘘だろ? 《トウジャCX》……」

「言ったはずですよ、勝世君。米国との渡りにしては、完璧とは言い難いと。……ある意味では貸しとなりますからね」

 自身の誇りとなる機体へと、勝世はタラップを駆け上がる。

 コックピットの下操主席に乗り合わせた相手を認めた瞬間、思わず絶句していた。

「……お前……」

「勝世、と言ったんだな? ……この巨体が何のためにあるかって、お前は言ったんだな。その答えを、見せてやる」

 変身した状態のダイクンが下操主席に収まり、操縦桿を握り締めている。

「……できんのか? こいつはトウジャだぜ?」

「グリムの遺産として、人機の操縦訓練は一通り受けたんだな。……問題なのは、自分一人では動かせないことだったんだな……」

「そうか。安心しろ。トウジャなら――オレは無敵だ」

 身に馴染んだ操縦系統を確かめつつ、勝世は上操主席に収まる。

 今も刻まれる人機の脈動を感じつつ、マニュアル操作を走らせる。

「……で、オレたちだけじゃないんだろ? 友次さん、作戦指示書は頭に入れたが……ちょいと無茶がありません?」

『無茶でも、やると決めたのは彼女です』

 取り付く島もないとはこのことか、と思えるような返答に、勝世は不平不満を飲み込む。

「……それならまぁ、オレたちにできる最大の戦いを、始めようじゃねぇか。おい、短足デブ」

「この状態の時は短足でもデブでもないんだな。それにオラにはダイクンって言う名前があるんだな」

「……じゃあ、ダイクン。お前に、“勝てる世界”を、見せてやるよ」

 そう言って不敵に微笑み、勝世は作戦開始時刻を待っていた。

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