「人機に……愛……?」
うろたえた自分に両兵は首を傾げる。
「意外だったか? オレが愛だの言い出すなんて」
「いや、そう……だな。お前は、人機は、ただの鋼鉄の塊だと、そうは思っていないのは知っていたが……愛、だとは……」
「……南米でな。どんなことがあっても人機に愛され続けていた……そういう奴がいたってのをよく知ってるんだ。そいつの眼、何度折れかけても、それでも立ち上がったさ。その輝きに近いものを、オレは今のお前には感じている……って言や、笑うかも知れねぇけれどよ。でも、そうなんだよ。人機に愛される奴ってのは、いつだって鈍感なもんなんだ」
まるで自分にはその寵愛の証が永劫失われてしまったかのように語る両兵に、何度も言葉を投げかけようとして、それでも上手くいかないことに気づく。
もどかしい心地を喉に感じながら、メルJはようやく――自分の言葉を発していた。
「……もう一度……、もう一度だけ、シュナイガーに会いたい」
拒絶されるのかもしれない。
いいや、そもそも人機は自分のような殺戮機械、愛してくれるのだろうか。
都合のいい銃弾程度にしか感じていないのかもしれないのに。
その懸念を両兵は吹き飛ばすように笑う。
「おう。行こうぜ、ヴァネット。もう一度、シュナイガーに会いに」
両兵が優しく手を引く。
決して強引ではなく、自分の意思に任せるように。
――ならば、もう一度、空へ。
《シュナイガートウジャ》の輝く、戦場へと――。
舞い戻るのに、今は少しだけ身体が軽かった。