JINKI 205 シールとさつきと

 フライトユニットの翼を折り畳んで、今まさに降下したのは黒く染まった地平であった。 『91式人機、《キュワン》の状態を確認。操主、川本さつきへと返答を乞う』 「は、はい……! こちら川本さつき、えっと……視界、血塊炉の反 […]

JINKI 204 アンヘルと蚕の市

 ふんふふーん、と鼻歌交じりにエルニィが境内で作業しているのを視界に留めて、赤緒はあれ? と首を傾げる。 「立花さん。今日は縁日の予定はありませんよ?」 「なぁーに、言ってんのさ。赤緒も知んない? いわゆる蚤の市って奴」

レイカル43 3月 レイカルとホワイトデーのお返し

「大変だ、ヒヒイロ! 創主様が……って、何だ、居たのか、ナナ子と割佐美雷に……それとカリクム」 「オマケみたいに言ってるんじゃないわよ……で? 何が大変だって?」  削里の店を訪れたレイカルは相変わらず相当な慌てようで、 […]

JINKI 203 優しい物語を添えて

「よぉ、メシ食いに来たぞ、柊ー……って、何だよ、居ねぇのか?」  柊神社に訪れる前に腹を空かせたのは少しミスだったか、と両兵が考えていると、居間でちょこんと座っているメルJの背中を発見していた。 「ンだよ、居るんじゃねぇ […]

JINKI 202 さつきとチョコのオマケ

「お茶が入りましたよー、ってあれ? お二人ともお茶の時間には少し早いですけれど……」  さつきが口ごもったのはルイとエルニィの身の回りには、既に数十個を超える菓子の包み紙が山積されたからだ。  自分のお茶は少しばかり遅か […]

JINKI 201 帰る場所があるということ

「暑い……視界も悪いし……」  赤緒は四方を囲われた劣悪な視野の中で、顔を扇ごうとして被り物に塞がれていた。  そうだ、今自分たちは動物の着ぐるみを纏って、スーパーで必死に客引きをしているのである。  エルニィやルイがめ […]

レイカル42 2月 レイカルと義理チョコ

「作木くーん、居ないの? 居ないなら入っちゃうわよー」  小夜は何度か作木の部屋のドアをノックしてから、合鍵で押し入っていた。 「お邪魔しまーす、ってレイカルは居るじゃない。珍しいわね、留守番ってこと?」