JINKI 240 相応しい場所で

 いつになく緊迫した様子で、居間に通された赤緒は南たちの顔色を窺っていた。
「……お、お茶が入りましたよー……って」
 南はどこか似つかわしくない赤縁の眼鏡をつけて、書類を整理している。
 その鬼のような速さと的確さに目を奪われていると、対面のエルニィが手を差し出す。
「赤緒、お茶。あるんでしょ? ぼうっとしてないでよ」
「あ、はい……。南さん、いつもよりかなり……」
「まぁ、参っちゃってるって言うか、今はちょっとね」
 赤緒はお盆を手にエルニィへと囁きかけていた。
「……その、もしかしなくてもトーキョーアンヘルの関係で?」
「もしかしなくてもそうだね。ま、赤緒たちには関係あるようでない話って言うか。主にどうにかなるのはボクとかルイとかだから。あっ、メルJもそうかも」
「……立花さんにルイさんに……ヴァネットさん?」
 関連性が見えない三人の名を出されて困惑していると、南がすっと手を差し出す。
 素早くホッチキスを手渡したエルニィも心得ているのか、動きに無駄がない。
「……その、本当に大丈夫なんですよね? 私が手伝わなくっても……」
「赤緒が手伝ったって仕方ないよ。まぁ、アンヘルの責任者って言うんだから、これくらいはねー」
 とは言え、自分にも少なからず影響して来ないとも限らない。
 赤緒は南へとそっと問いかけていた。
「そ、そのー、南さん? 食べたいお茶菓子とかあれば、買ってきますけれど……」
「待って。今はそういう状況でもないのよ……」
 後頭部を掻いた彼女は何だか平時とは状況が違うようで、赤緒は当惑してしまう。
「……そんなにお忙しいんですか?」
「忙しいって言うかなんて言うか……あー! もうっ! 何だってこの書類も、この書類も……!」
 限界化した南が書類の束を卓上に置いて頭を抱える。
 赤緒はあわあわとうろたえることしかできない。
「……み、南さん? 大変……お茶を淹れてきますね……」
 台所へと取って返してから、赤緒は台所の戸棚に隠しておいた菓子を失敬しているルイと顔を合わせていた。
「あら? 赤緒ってばどうしたのよ。何だか世界の終わりみたいな顔をしているけれど」
「る、ルイさん……。南さんが、その……すごく大変そうで」
「ああ、南が。何でもないわよ、よくある癇癪みたいなものだし」
「け、けれど今回はいつもと違って……ど、どうしましょう……」
「そうね……原因は多分、あの自称天才なんだろうけれど」
 そう言われてみて、ルイにも関係があるのだと伝え聞かされていたことを思い返す。
「……ルイさんとヴァネットさんにも関係があるって……」
「私? 私は……そうね。関係あるかもね」
「何があったんです? 南さん、一秒の誤差も惜しいみたいだから、聞くに聞けなくって……」
「相変わらず赤緒の優柔不断だこと」
 それを言われてしまうと、うっとダメージを受けざるを得ないのだが、尋ねていた。
「……何か、その……手伝えることでも……ないんでしょうか?」
「そうね。まずは事の次第から、ちょっと追々言っていきましょうか」
 洋菓子の箱を開けたルイは、チョコチップクッキーを口に含んで説明を始めていた。

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