JINKI 39 「蘇る翼」

「どうです? これが我が国家が威信にかけて開発した、人機の第一号機です」  その言葉と共に照明が照り返され、水色の兵器をその場に集った者たちに見せつけた。  表向きは、各国政府への品評会だ。この時、拍手喝采が起きたのを、 […]

JINKI 38 守り人の価値

「あー、そうじゃねぇ。もっと寄せるんだよ。ナナツーなんて姿勢制御楽なほうだろうが」  両兵の言葉に迷彩仕様の《ナナツーウェイ》がよろめき、またしても倒れる。前のめりに倒れたお陰で派手にすっ転げる事態は防げたが、それでも何 […]

JINKI 37 ライフイズビューティフル

 銃の握り方を知ったのは、五歳の頃だった。  他のおもちゃと同じように、まさかこれで人が死ぬなんて思いも寄らない。だが、父親はそれを与え、そして誇らしく笑ったのを、記憶の断片で覚えている。  実際に撃ってみると、反動で肩 […]

JINKI 36 雨宿りの間に

「あっ、降り出しちゃった……」  思わぬ悪天候に見舞われ、さつきは大慌てで洗濯物を取り込もうとする。今日はいやに静かだと訝しむと、そういえば五郎と赤緒は地鎮祭に赴いており、南とエルニィは新型人機の試験に出かけていることを […]

JINKI 35 絶対じゃない今

 子供の頃は、何かと万能感が勝っていた気がする。  何をやっても自由、何をされても自由。だから、特に気を利かせたつもりはなかったし、気にかけたこともなかった。  そういうものだ、と飲み込み始めたのは物心ついた時には既にだ […]

JINKI 34 譲れないものひとつ

 重く沈殿した静寂に、両兵は夜空を仰ぐ。  とっくに暮れた月夜の晩に、背中を預けたのは軽自動車一台。ここに酒でもあれば、少しばかりマシなのだが、生憎酒もつまみもない。両兵は車越しに沈黙を貫いている相手へと言葉を投げていた […]

JINKI 33 青い風の舞う空

 ――リバウンドの航空力学で飛翔する物体を分類上、「戦闘機」とは区分しない。  これは大国が保有数を誤魔化すための詭弁だとか、あるいはもし実戦の域に達した場合において、既存戦闘機とアンノウンを区別するためにある。  ここ […]

JINKI 31 ポイント12、1452

「両、ちょっと顔貸しなさい」  突然に橋の下に現れた南に、両兵は寝そべったまま、乗せた雑誌だけを持ち上げて応じていた。 「ンだよ、黄坂か。まーた、あいつらのご機嫌うかがいなんてやる気はねぇぜ」  欠伸を噛み殺し、再びうつ […]

JINKI 30 チキチキ!アンヘルとんとん相撲

 コンテナから覗いた紺碧の機体に、エルニィは、おーっと声を上げていた。 「これ、南米の?」  ええ、と友次がデータを読み上げる。いくつかの黒塗りと、極秘事項のラベルが貼られた仕様書には、こう記されていた。  名称――《ア […]