JINKI 247 ルイと入学式


 赤緒の探り探りの言葉にエルニィは台本を読みながら、こほんと咳払いする。
「じゃあ、それで。校長先生……は、居ないからボクが挨拶しちゃうね。まぁ、言っちゃえばこのトーキョーアンヘルで一番偉いみたいなもんだし」
 エルニィの視線の先にはパイプ椅子に座り込んでいるルイと、その隣にはさつきが居た。
 赤緒はそれとなく、同じように駆り出されて参列しているメルJへと囁きかける。
「えっと……これって合ってるんですかね? 私、よく分かんなくって」
「私が知るわけないだろう。日本人の学校における入学式の作法なんて」
 確かにメルJに問いかけたところで分かるはずもない。
 それよりも、と困惑顔のメルJは囁き返していた。
「……黄坂南はずっと後ろに居るが、何なんだ? こういう時に役に立つのがアンヘル代表の役割だろうに」
「あっ、それはその……だって保護者じゃないですか。ルイさんの……」
「保護者と言うのは日本の入学式では後ろでずっとニコニコしているものなのか? 気色悪い……」
 辟易するメルJであったが、赤緒にしてみれば、それもまた南にとって重要な役どころなのだろうと理解する。
「……だって、嬉しいんじゃないですか? 自分の娘が、入学式をやるって言い出したのなんて」
「そんなものか。……ふぅむ、理解できんな」
 ため息をつくメルJに赤緒はどうしてこうなってしまったのかを思い返していた。

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