JINKI 245 アンヘルの太陽

「ねぇ、さーつきっ。雨はいつ降るのかなぁ?」 そんな益体のない言葉を吐いたエルニィに軒先でさつきは応じていた。「そうですねぇ……。ここ数日間は、晴れの予報ですけれど……」「えーっ! つまんないー! せっかく買ったのに、出 […]

レイカル 52 12月 レイカルと中二病

「……うー、寒っ。……あれ? レイカル、どうしたのよ、それ」  削里の店へと足を運んだ小夜は黒いコートを着込んでいるレイカルを発見する。 「ふふっ……知りたいか? 割佐美雷……」  その手には包帯が巻かれており、まさか、 […]

JINKI 242 ささやかな思い出を綴って

 カポン、と音が遠く長く、残響する。 そう言えば、この時間帯に風呂に入るのは初めてであったか、と感傷が掠めたのも一瞬、隣で湯船に浸かるルイはこきりと肩を鳴らす。「酷い目に遭ったわね。……あんたのせいで」「わ、私のせいです […]

レイカル51 11月 レイカルといい日旅立ち

「寒っ。すっかり冷え込んできたわねぇ……」  駅のホームに出るなり、小夜はそうぼやいていた。  今日は少し遠くのロケ場所に行くのに、珍しく電車移動で、小夜はコートを羽織っていた。

JINKI 241 漕ぎ出すガッツを

「あっ、青葉さん。現太さんにこの書類を渡してもらえるかな? 軍部から送られてきたんだけれど、できるだけ早急に見て欲しいって」 《モリビト2号》から降りたところで、川本から頼まれたおつかいに、青葉は承諾する。 「はい。えっ […]

JINKI 240 相応しい場所で

 いつになく緊迫した様子で、居間に通された赤緒は南たちの顔色を窺っていた。「……お、お茶が入りましたよー……って」 南はどこか似つかわしくない赤縁の眼鏡をつけて、書類を整理している。 その鬼のような速さと的確さに目を奪わ […]

JINKI 239 届けたい明日のために

 空高くを鳥が羽ばたいている――と、益体のない意識に取られた一瞬後には乗り合わせた船が大きく揺れたのを感じ取っていた。 「……それにしても、こういった形で海を渡ることになるとは思いも寄りませんでした」  そう告げる相手へ […]

JINKI 238 さつきとクマのぬいぐるみ

「まったくもう……立花さんも片づけないんだから……」  居間のそこいらに散らかっているエルニィの発明品を慎重に片づけていると、ふと目に留まったのは――。 「うん? クマ……さん、のぬいぐるみだ、これ……」