空高くを鳥が羽ばたいている――と、益体のない意識に取られた一瞬後には乗り合わせた船が大きく揺れたのを感じ取っていた。 「……それにしても、こういった形で海を渡ることになるとは思いも寄りませんでした」 そう告げる相手へ […]
カテゴリーアーカイブ:JINKINobel/著 シチミ大使
JINKI 238 さつきとクマのぬいぐるみ
「まったくもう……立花さんも片づけないんだから……」 居間のそこいらに散らかっているエルニィの発明品を慎重に片づけていると、ふと目に留まったのは――。 「うん? クマ……さん、のぬいぐるみだ、これ……」
JINKI 237 もっと強さと願いを
弾薬切れはそれだけで戦闘状況を一変させかねない、と青葉は《モリビト雷号》のバックパックに補給物資を備え付けていた。 その分の重さで、平時よりも機体の反応は僅かに鈍い。
JINKI 236 3,300円の夕食
「すっかり遅くなっちゃいましたねー」 日課の操縦訓練を終えたところで、赤緒は時計を気にかけていた。 既に夜の七時を回っており、夏が近づいて外は明るいが平時ならば夕食の頃合いである。
JINKI 235 頼れる友に
いつだって引き金を絞る際には、緊張が付き纏うものだ。 さつきは照準器の向こう側に佇むシミュレーターの仮想敵を見据え、何度か銃撃する。 「……一つ、二つ……」 自分でもリズムというものは取れて来たような気がするが、命 […]
JINKI 234 南の成人式
「おう、黄坂。いい酒入ったぜ。久しぶりにどうよ」 酒瓶を振って軒先へと向かってきた両兵に、湯飲みを覗き込んでいた南は呆れ返ったようであった。 その模様を赤緒は洗濯物を干しながら眺める。
JINKI 233 いい操主であること
「青葉ー。ちょっとそこんところのシステムの洗い出しするから、一旦モリビトから降りてくんない? 操主ありだと、ちょっとややこしいんだよね」 エルニィの声を受け、青葉は下操主席のシートベルトを外していた。 「あ、うん……。 […]
JINKI 232 ヒミツの物語の続きを
「さつき、今日は自称天才の奢りで渋谷に行くわよ」 帰り支度を進めていると、ルイがそう急かして来たので、さつきは当惑する。 「る、ルイさんっ! 駄目ですよ、買い食いは校則違反で……」
JINKI 231 二人だけの島で
「それにしたってよ……流れ流れて、にしちゃあ、もっとやりようはあったんじゃねぇの?」 ぼやいた両兵に対し、エルニィは《ブロッケントウジャ》の電算パーツを組み上げていた。 「文句言わないでよ。ボクだってこうなるなんて想定 […]
JINKI 230 交差する道も
翻った黒い翼を、一機、また一機と撃墜していく。 漆黒の機影は大地を踏みしだき、袖口に仕込んでいたワイヤー装備で空を舞う《バーゴイル》を叩き落としていた。 「逃がさ……ない!」 アンカーが《バーゴイル》の飛翔を妨げ、 […]