コンテナから覗いた紺碧の機体に、エルニィは、おーっと声を上げていた。
「これ、南米の?」
ええ、と友次がデータを読み上げる。いくつかの黒塗りと、極秘事項のラベルが貼られた仕様書には、こう記されていた。
名称――《アサルトハシャマークV》。
JINKI オリハルコン・レイカル 人狼機ウィンヴルガ
作品の一つとして、人造人間であるゾールは完璧である、と主は告げていた。
「だってそうじゃないか。彼らには繁殖に必要な器官は存在せず、そして不要な思考回路は全て遮断され、ただ戦闘にのみ研ぎ澄まされた神経がある。内臓もないから兵役にとって一番の問題点である食糧問題を完全に克服した、新たなる人類のひな形だよ」
その言葉を人格がない交ぜになった道化師――マージャは聞いていた。
既に人格融合は果たされている。内包する記憶の中に、ゾールに関しての情報源を呼び起こし、能面の道化師は口にする。
「……私にとってもあれは自慢の一つです。なにせ、我がグリム協会の生み出した、至高の作品が一つ。そのうちの一つは……我が手にはありませんが」
思い描いたのは移植された過去。マージャの中で「Jハーン」としての人格が呼び起こされる。